巨大な旅館やホテルが立ち並ぶ「熱海温泉」。
最近は熱海駅の全面リニューアルもあり、浴衣姿の女子が温泉街を散策するなど、以前の男前な雰囲気とは異なるさわやかな一面が見られるように。
若者や外国人旅行客に人気の、最先端な温泉地に返り咲いた感があります。
そんな熱海温泉ですが、「昭和のまま時代に取り残された」ような宿もちらほら。
温泉マニアにはたまらない、いわゆる「ひなびた温泉」です。
今回はその中でも最高峰と言える、80年前の姿がそのまま残るレトロな温泉宿「竜宮閣」をご紹介します。
目次
熱海駅から徒歩3分! 一等地に佇む、ひなびた温泉「竜宮閣」

新しくなった熱海駅から徒歩3分の一等地に立っている「竜宮閣」。
この辺りは商店街が近いということもあり、いつも観光客で賑わうエリア。そんな熱海の最先端のスポットに、「竜宮閣」は昭和に取り残されたかのような佇まいで鎮座しています。
昭和12年の創業時から変わらないレトロな旅館

創業は今から80年以上前の、昭和12年。
元々蕎麦屋さんだったところをご主人のおじいさんが買い取り、旅館として営業をスタートしたのだそうです。
驚くべきはこの建物、開業した当時からのもの。
80年以上、この地に変わらずに君臨している熱海の超老舗旅館です。


館内の内装や下駄箱も、開業当時から残るもの。
古いものにしか出せない独特の味は、歴史を重ねることで価値が増すアンティーク。
ただ古いだけではなく、大切に使われることで磨かれ、しっかりと手入れの行き届いた上質な空間です。
ご主人のおばあさんは、ジブリ映画「風立ちぬ」のモデルになった小説家・堀辰雄

ジブリ映画「風立ちぬ」のモデルになった小説家・堀辰雄氏の書。
なんでもご主人のおばあさんが、堀辰雄氏の「はとこ」なのだそうです。
浴室はタイルが素敵なひなび空間

「竜宮閣」には2つの浴室があり、空いていればそれぞれ貸切で利用することができます。
大きめの浴室は、3〜4人入ればいっぱいの湯船がひとつ。全面がレトロなタイルの「ひなびた」空間が素敵です。


大きめの浴室は、浦島太郎が竜宮城を目指すタイル画が印象的。
反対側の壁面には、ヨーロッパの絵画を想わせる水浴びをする女性のタイル画が施されています。

小さめの浴室は、2人入ればいっぱいの湯船がひとつのこじんまりとしたつくりです。
こちらも全面がレトロなタイルの「ひなびた」空間。奥に佇む女神のオブジェがいい雰囲気を醸し出しています。


こちらのタイル画は、コイの泳ぐ池と、反対側に富士山を望む風景の2種類。
ちなみにこの「コイ」のタイル画、ご主人いわく、とても有名な画家の方の作品なんだそうです。
ただ、“らしい”というだけで、詳細はよくわからないそうですが……それもまた乙ですね。

どちらの浴室も80年前の開業時につくられたもので、今も当時と変わらない空間。絶妙に「ひなびた」レトロな雰囲気がたまりません。
外のにぎやかさからは隔離された静寂の浴室は、昭和の時代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る、不思議な湯浴みを味わうことができます。
お湯は源泉100%かけ流しの「塩化物泉」

泉質は、「カルシウム・ナトリウム-塩化物泉」。程よくダシの効いた塩味で、身体の芯までよく温まる典型的な「熱海の湯」です。
源泉温度は70度台とそのままでは入れない熱さですが、ここでは加水せずに湯口で湯量を調節し湯温調整しています。
そのため、源泉が薄まることなく濃厚な成分のまま湯船に投入。もちろん加温する必要もなく循環もしない、「源泉100%かけ流し」というのが嬉しいところです。
つるつる&キシキシ感を同時体験!

熱めの適温に調整されたお湯は、入るとつるつる感とキシキシ感が同時にくる独特の肌触り。
しばらくつかっていると、身体全体が成分の膜で包まれるような感覚が心地良く、浴室の「ひなびた」空間と合いまって、五感から「癒し」を感じる、この上ない贅沢な時間でした。
湯上がりはもちろん全身ポカポカ。汗を拭いても拭いても、お湯をかぶったかのようにまた汗が吹き出してきます。
温まり効果は抜群ですが、美肌効果も秀逸。塩分の効果か、しっとり肌を通り越して、吸いつくようなもっちもち肌を実感できました。
食事は「竜宮閣」向かいの商店街がおすすめ

宿で食べる料理も美味しいですが、「龍宮閣」の向かいは熱海の商店街。味自慢の名店が数多く立ち並んでいます。
この日の気分は「お寿司」が食べたい。ということで、宿から徒歩10秒の至近距離にある「寿司の磯丸 熱海平和通り店」へ。

同じ静岡県内の沼津港で水揚げされたという、新鮮な地魚を中心に使ったメニューに舌鼓。分厚くて口に入れた瞬間トロけるような絶品のネタです。
回らないお寿司屋さんではありますが、価格は回転寿司並みにリーズナブル。地のものだからこそ堪能できる味と価格に大満足です。
時代に取り残された空間はまさに竜宮城気分

創業の昭和12年当時の空間がそのまま残る「龍宮閣」。その風情に魅了されたお客さんは数多く、この空間にまた身を置きたいと、リピーターになる人が多いのだそうです。もちろん私もその一人。
太平洋戦争の頃は、東京・大森の小学生の疎開を受け入れていた歴史もあり、今でも80歳を超えた当時の小学生が訪ねてくることもあるんだとか。

温泉街全体が、都会よりゆっくりと時間が流れている感がありますが、ここは時が止まったかのような空間。昭和にタイムスリップして、宿を出たら目の前は最先端の熱海。そんな時代に取り残された、現代の「竜宮城」のようなノスタルジックで不思議な気分を味わってみてはいかがでしょうか。
3代目という人懐っこいご主人も竜宮閣の魅力のひとつ。今後、何年も何10年もこのままの姿の残してほしい素敵な宿でした。
「竜宮閣」の施設情報
施設名 | 熱海温泉 竜宮閣 |
---|---|
住所 | 静岡県熱海市本町1-14 |
電話番号 | 0557-81-3355 |
URL | http://ryugu.atami-spa.com/ | 泉質 | カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉(低張性 弱アルカリ性 温泉) | 泉温 | 77.1℃ | pH | 7.8 | 湧出状況 | 動力 | 湧出量 | 32.6ℓ/分 | 加水 | 無(セルフで可能) | 加温 | 無 | 消毒 | 無 | かけ流し | 完全かけ流し |
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