【地獄?天国?】床一面に広がる、源泉ドバドバ大洪水!青森県の超絶ひなびた「古遠部温泉」

青森県「古遠部温泉」

平成も終わりに近づき、新しい年号が迫ってきた今日この頃。

時代の流れはどんどん速くなるように感じ、都会にいると毎日がせわしなく通り過ぎていきます。

そんな日常に疲れたら、やはり温泉に行きたくなるもの。充実した設備を携えた最新の温泉も良いですが、こんな時にこそ訪れたいのが「ひなびた温泉」です。

昭和のまま時が止まったかのような空間で入る温泉に、独特の魅力を感じる人も多いのではないでしょうか。さらに、泉質もよければ言うことなし。

今回はそんな願いを叶えてくれる「ひなびた温泉」のひとつ、青森県の「古遠部温泉(ふるとうべおんせん)」をご紹介します。

青森の山あいに佇む一軒宿「古遠部温泉(ふるとうべおんせん)」

青森と秋田の県境に位置する矢立峠。このあたりは良質な温泉の湧く一軒宿が点在し、碇ヶ関温泉郷と呼ばれているエリアです。

そのなかでも屈指の人気を誇るのが、「古遠部温泉(ふるとうべおんせん)」

峠を走る国道から一本それた脇道を行くこと数分。アスファルトの舗装道路が砂利道にかわり、ケータイも繋がらないような山深い景色の中にポツンと佇んでいます。

古遠部温泉は40年ほど前に鉱山の試掘で湧き出した比較的新しい温泉ではありますが、山の緑をバックに建つ素朴な木造旅館はしっかりと「昭和の香り」を残しています。

こちらは看板犬の「チョコ」くん。

向こうからシッポを振って、いかにも遊んでほしそうに近づいてくるかわいいやつ。

凛々しい顔つきですが、人懐っこい性格です。

超絶にひなびた「昭和」の芸術空間

青森県「古遠部温泉」

木造の趣ある浴室内は、無駄なものの一切ないシンプルなつくり

ひなびた外観からも期待がふくらむ浴室は、その期待を何倍も上回る超絶な「ひなび具合」。

木に染みついてこびり付いた温泉で床は赤茶に変色し、何年も時間を重ねないと出せない、絶妙な風情を醸し出しています。

足の踏み場もないほど、源泉ドバドバ!

青森県「古遠部温泉」

あふれんばかりの湯量に、絶句するほど!

そして、特筆すべきは「湯量」。

毎分約500リットルのお湯が自噴し、そのままドバドバと湯船に注がれています。

湯口から決壊したかのように流れるお湯は、浴槽の大きさにまったく見合わず、あふれ出て浴室全体を洪水のように浸します。

常連さんは、湯船につかるだけでなく、浴槽のわきに仰向けになる寝湯状態で思い思いの時間を過ごすのだとか。

ちなみに、このスタイルは「トド寝」と呼ばれ、「古遠部温泉」の名物になっています。

お湯につかって、トド寝して、源泉を飲んでまたお湯につかる。そんな無限ループで、超絶にひなびた空間を、全身で味わう贅沢な時間。

現代から取り残され、ゆっくりと時が流れる空間ですが、気づけばあっという間に数十分が過ぎていました。

後づけ感はありますが、浴室の端にはシャワーを完備。

備え付けのシャンプーもあり、設備は意外と充実しています。

平成の現代にありながら、浴室は「昭和」に取り残されたような空間。時間のゆっくり流れる雰囲気は、「ひなびた温泉」好きをしびれさせてくれます。

「古遠部温泉」は男女別で、この4、5人が入れる湯船がひとつの内湯のみ。こじんまりとしていますが、まるで絵画のように芸術的な「画ヂカラ」を感じます。

「炭酸オレンジ」ようなフルーティなお湯の大洪水

「ひなびた」雰囲気も素晴らしいのですが、負けず劣らず「温泉」そのものも秀逸。

泉質は、「ナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉」。

少し茶緑がかったにごり湯は、加水・加温・循環・消毒のない「完全かけ流し」です。

鼻をさわやかに抜ける鉄の香りが心地よく、熱めの源泉で満たされた湯船は、入ると少しピリリと感じ、キュッキュとした肌触りがあります。

しばらくつかると感じる炭酸の泡付きは、鮮度が抜群な証拠。

ひなびた雰囲気と最高の源泉……夢心地の湯浴みを堪能することができました。

 

湯口に湯呑みがあったので、早速飲泉。

薄いお吸い物ぐらいの濃さの源泉は、甘味、鉄味、塩味、ダシ、炭酸と色々な味で構成され、オレンジジュースを炭酸で割ったようなフルーティな飲み口。

間違いなく美味しい温泉ランキングの上位にランクインする味わいです。

浴室の窓から見えるのは、壮観な全面析出物。

大量の源泉がそのまま流れる光景は、この世のものとは思えない、地獄のような、天国のような景色を作り出しています。

 

 

 

ひなびた「非日常空間」の心地よい「日常風景」

都心に暮らす人々にとっての日常はコンクリートジャングル。だからこそ、このひなびた風景に「非日常」を感じることができます。

そんな「古遠部温泉」ですが、絶えることのないお客さんのほとんどが地元の常連さんたち。今回は日帰りでの入浴だったこともあり、地元の方々の「日常」に少しだけ仲間入りさせてもらったような心地よい時間でした。

 

東京からの若者が珍しかったのか、浴室では常連のおじさんたちとの温泉談議に花が咲きました。ゴリゴリの津軽弁は英語より難しかったですが…

湯上がりには、毎日通うという地元のおばあちゃんから、家で採れたというトマトの嬉しい差し入れも。真っ赤に熟しフルーツのように濃い水分が、ほてった身体に染みわたるような感覚は風呂上がりの幸せなひととき。

ひなびた「非日常空間」の中、地元の方々の「日常風景」が垣間見え、典型的な観光地とは一味違う旅の醍醐味を体験することができました。

「古遠部温泉」の施設情報

施設名 古遠部温泉(ふるとうべおんせん))
住所 青森県平川市碇ヶ関西碇ヶ関山1−467
電話番号 0172−46−2533
URL http://www.furutoobe-onsen.com/
泉質 ナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉(低張性 中性 高温泉)
泉温 43.6℃
pH 6.77
湧出状況 自噴
湧出量 478ℓ/分
加水 なし
加温 なし
消毒 なし
かけ流し 完全かけ流し

温泉王子・小松歩の温泉コラムをもっと読む