鹿児島港から週2便のフェリーで10時間、トカラ列島の「悪石島」はトカラブルーの海と不思議な伝承の残る島ですが、3つの温泉が集まる温泉天国でもあります。
『テルマエ・ロマエ』に出てきそうな天然の砂蒸し風呂に、海の中に湧きだす天然温泉。そして、島民に愛される共同浴場。
記事の後半では「悪の集団」の一味になれる島限定のお土産をご紹介します。
目次
ちょっとぬるめの海中露天風呂

鹿児島港を23時に出港したフェリーが、悪石島に到着するのは朝の9時半ころ。
高台の集落に続く坂道をのぼって、一度宿に荷物を置きに行きます。歩いて向かうつもりでしたが、隣の民宿の送迎に同乗させてもらいました。
3つの温泉は近いところに集まっていて、共同浴場の営業時間は16時から。お昼ご飯を食べてから向かうことにしました。
軽自動車がうなる山道ですが、降りるのはスイスイ。港へと降りる途中の大きな温泉マークを目印に、どんどん歩いていきます。

ズゴーーッ、ボゴーーーッっと音を立てる源泉ポンプが見えてきたら、1つめの温泉はもうすぐそこ。
この源泉は共同浴場に引湯していますが、すぐ近くには海の中から温泉がわき出す場所があるのです。

ガードレールに「海中温泉」と書かれているのを目印に、海岸に降りて行きます。

消えかかっていますが、温泉マークを発見。

本来は海水浴シーズンのみ入れるそうですが、訪れた日は快晴で汗ばむ陽気だったので頑張って入ることにしました。

何ヵ所か、源泉が湧き出す場所があるので、手で温度を確かめながら、適温の場所を探します。

うん、気持ちいい! 全身つかれるところは37℃くらいになってしまうので、あがるタイミングがつかめずしばらく入浴することに……。
対岸は港で、この日は島の子どもたちが釣りをしていました。不審者がいるって思われてないといいな。
波で削られた丸い岩が並び、裸足でもなんとか入れましたが、低い波でも身体ががっつり引っ張られます。
ちょっとずつ波が高くなってきたので、次の温泉を目指して歩くことにしました。
まるで『テルマエ・ロマエ』!?火山に作られた天然岩盤浴

集落から温泉に続く道は、キャンプ場で行き止まりになっています。
芝生と亜熱帯の木々、そして青空のコントラストに見とれていると、山の中腹に気になるものが。

岩肌がむき出しになった一角に「砂蒸し温泉」があるではありませんか。砂蒸し温泉といえば指宿が有名ですが、まさかここでもお目にかかれるとは。

中に入ってみると、砂や小石が敷き詰められており、ところどころ湯気があがっています。
少し掘って温度を調整し、バスタオルを敷いて楽しみます。
僕はあいにくバスタオルを持っていなかったので、浅いところにそっと背中をつけてみました。
シャツ1枚では数分でギブアップになるほどの熱を帯びた砂に、火山の力強さを感じます。
※低温やけどのおそれがある上に、服が汚れるので、必ずバスタオルなどの敷物を持っていきましょう。
硫黄の結晶が転がる火山にのぼってみた

砂蒸し風呂の後ろにそびえる岩山には、登山ルートが整備されています。小石がゴロゴロとしており、結構急ですが、両手がフリーな状態で歩きやすい靴であれば登れます。
少し登ったところから振り返れば、キャンプ場がくっきりと。
古代ローマの温泉をテーマにした映画『テルマエ・ロマエ』の、兵士の傷を癒やすために岩盤浴場を建てるシーンを思い出します。

岩山には、ところどころから噴気を上げる場所があります。うっかり近づくと危ないので、足元をよく見ながら歩きます。

硫黄の結晶と思われる、黄色い粒も転がっています。

岩山を降りて、近くの草木が生い茂る一角をみると、淡いピンクのツツジが満開でした。
硫黄の火山とツツジの組合せは、那須湯本の殺生石を思い出しますね。
島の共同浴場は200円で源泉かけ流し!

ワイルドな温泉2つを体験して、すっかり満足したところで島唯一の温泉施設「湯泊温泉」の開店時間になりました。
昼間の照り付けるような日差しはやわらぎ、16時になると少し空気がやわらいだ感じがします。
温泉には島の子どもたちも集まっていました。「しおかぜ留学」といって、島で暮らしてみたい子どもたちが全国から集まっているそうです。
先生も来ていて、まるで家族のよう。小さな島の学校ならではの仲の良さにほっこりします。

開店前に撮らせてもらった写真です。
温泉は、「ナトリウム・カルシウム・マグネシウムー塩化物・炭酸水素塩泉」。長い名前の通り、ミネラルがたっぷり入った濃い温泉です。
灰緑色の濃いお湯は、意外にもキシキシせずなめらか。島の人たちはこのお湯を汲んで持参した石鹸で身体を洗っていますが、石鹸がしっかり泡立っているのが意外でした。

建物は全体的にだいぶ年季が入っています。ひなびた温泉の風情が素晴らしい!

島の子どもたちが壁をペイントしているなど、島の人に愛されているのを実感します。
「湯泊温泉」の詳細情報
施設名 | 「湯泊温泉」 |
---|---|
住所 | 鹿児島県鹿児島郡十島村 大字悪石島 |
営業時間 | 16時00分〜21時00分 |
定休日 | 不定休 |
利用料金 | 200円 |
URL | http://www.tokara.jp/tourism/profile/akusekijima/ |
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悪石島の宿・見どころほか
悪石島には5つの宿泊施設があります。飲食店がないので、滞在中の食事はすべて宿で提供してもらいます。
連休や夏休みなど、宿がとれないときに泊まれるのが、移住体験施設「悪石島コミューン」。僕もこの宿に泊まりました。
観光客は1泊4,000円、ワーケーションやお試し移住の方は2,000円と格安。島には売店があり、宿のキッチンが充実しているため、自炊しながら快適に過ごせます。
悪石島の制服!?「悪の集団」に仲間入りしよう

島に唯一の売店は、11時から13時のみの営業。食料品など、生活に欠かせない商品が売られている一角に、ここでしか買えないお土産が並んでいます。
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背中に「悪」と大書された悪石島のTシャツとつなぎ。船の接岸作業をする方から、役場の出張所に来ていたお母さんまで、島の人の半分くらい(体感)が着ているのでもはや制服といっても過言ではないほど。
「島ではみんな着ているんだけど、鹿児島市内ではまだまだ知られていないんですよ」と宿のご主人は笑います。
悪石島を訪れたら、ぜひ島限定の「悪Tシャツ」を買いましょう。そして本土で着て、悪石島のPRもしましょう!
Tシャツは2,000円、つなぎは4,500円とお手頃価格です。
奇祭「ボゼ」は世界無形文化遺産

悪石島の奇祭「ボゼ」は、シュロなどで作られた仮面をかぶった神々が、島の人々のもとを訪れる祭りです。
異形のボゼが持つ「ボゼマラ」という棒で泥水をつけられると、悪霊祓いの効果があるほか、女性は子宝に恵まれるそう。
ボゼは1年に1回限りですが、島のお社には仮面が展示されていました。
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