ひなび過ぎて時間が止まる…たった100円の「激渋共同浴場」【新潟県・雲母温泉】

生きているだけでなんとなくせかせかする日常に疲れたら、時間がゆっくり流れる「ひなびた温泉」で、心と身体を癒したいものです。

今回ご紹介するのは、新潟県北部・関川村の「雲母温泉」。高瀬・鷹の巣・湯沢・雲母の4つの温泉地からなる「荒川峡温泉郷(えちごせきかわ温泉郷)」の一角をなし、川に沿って温泉が点在しています。福島・山形との県境にも近く、飯豊(いいで)連峰を望む自然豊かなエリアに位置する雲母温泉で、「ひなびた温泉」を2つめぐってきました!

「雲母」と書いてなんと読む?

先ほど「雲母温泉」に行ったと書きましたが、どう読むのかわからなかった人も多いはず。

「うんもおんせん」ではなく「きらおんせん」と読む、知らないとまったくわからない不思議な読み方をする温泉地です。ここには2つの共同浴場が存在し、どちらもいい感じに「ひなびた」風情。

国道113号を日本海側から内陸に走っていると「荒川峡温泉郷」にさしかかり、最初に見えてくるのが「雲母温泉」。ひとつめの共同浴場「上関共同浴場」は、その国道沿いに静かに建っています。

かざらない地元向けのひなびた「上関共同浴場」

国道沿いに佇む「上関共同浴場」。素朴でシンプルな外観は昭和の風情をそのまま残しています。

建物は頑丈で安心感のあるコンクリート製。決して観光客向けではない、簡素かざらない設えも、また味があります。駐車場は共同浴場の道路向かいにありますが、私の車以外はすべて地元の方々。部外者にとっては、若干アウェイな雰囲気かもしれません。

この共同浴場は管理人不在で無人の施設。

ですが、ひっきりなしに地元の方々が来られるので、防犯的には安心のようです。

入浴料は破格の100円。お金は料金箱へ投入。するとビックリ! ビーっとけたたましい轟音が鳴り響きます。しかも結構長い…。

一瞬やばいことをしてしまった罪悪感にさいなまれますがご安心ください。これは無銭入浴を防ぐブザーなんだそう。その後、お風呂に入っている時も入浴客が来るたびに、浴室までこの轟音が響きわたっていました。

浴室は男女別の内湯のみ。3、4人入ればいっぱいの湯船がひとつのみのシンプルなつくりです。

年季の入ったタイル張りの風情ある浴室は、昭和にタイムスリップしたかのような雰囲気。古いながらも清潔に保たれ、居心地の良い空間です。

泉質は、ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。湯温76.3度と高温のため、沢の水で加水しているようですが、湯量豊富なかけ流しで、サーサーとオーバーフローしています。

ほのかに漂う甘い湯の香り、ツルキシ感と肌にプルっとまとわりつく感覚は「ザ・硫酸塩泉」といったところ。コップがあるので飲泉すると、ほんのり塩ダシ味のやさしい味です。

私以外の入浴客は全員地元の方々。最初はアウェイな感じがしましたが、お湯につかれば地元の方々との温泉談義に花が咲きます。皆さんのやさしい人懐っこい笑顔が印象的。実は部外者でもやさしく受け入れてくれる温かな共同浴場でした。

「雲母温泉 上関共同浴場」の詳細情報

施設名 雲母温泉 上関共同浴場
住所 新潟県岩船郡関川村上関912
URL http://www.sekikawa-kankou.com/onsen/
泉質 ナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉(低張性 中性 高温泉)
泉温 76.3℃
pH 7.2
湧出状況 動力揚湯
湧出量 90L/分
加水 あり(源泉温度が高いため)
加温 なし
消毒 なし
かけ流し 完全かけ流し

ひなび過ぎて時間が止まる「雲母共同浴場」

雲母温泉のもうひとつの共同浴場「雲母共同浴場」は、「上関共同浴場」から車で1分走ったところに佇んでいます。

こちらの「雲母共同浴場」は、先ほどの上関共同浴場を何十倍もひなびさせたような木造の共同浴場です。ひなびまくっていて、「渋い」を通りこし「激渋」という言葉が似合う、昭和のまま時間が止まってしまったような雰囲気。眺めているだけで過去に「トリップ」できそうな究極の風情です。

また、共同浴場とわかる看板もなく、知らないと「廃墟」にしか見えないかも。

浴室は男女別の内湯で、湯船は2人入ればいっぱいの大きさ。昭和レトロなタイルも素敵です。

お湯は上関共同浴場と同じ源泉のようですが、源泉の距離の近さからか、こちらの「雲母共同浴場」の方が、香りや肌触りの特長が強いように感じました。

こちらの共同浴場も無人のため、中に入ると料金箱が設置されています。入浴料はこちらも100円。お金を入れても轟音はならないのでご安心ください。

「雲母温泉 雲母共同浴場」の詳細情報

施設名 雲母温泉 雲母共同浴場
住所 新潟県岩船郡関川村雲母温泉
URL http://www.sekikawa-kankou.com/onsen/
泉質 ナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉(低張性 中性 高温泉)
泉温 76.3℃
pH 7.2
湧出状況 動力揚湯
湧出量 90L/分
加水 セルフ
加温 なし
消毒 大掃除時に消毒
かけ流し 完全かけ流し

新潟名物「塩引鮭」を食す

「雲母温泉」から日本海側へ約30分走ると村上市へ入ります。

ここは鮭の遡上する川があるため「鮭」が名物。日本海を見下ろす高台に建つ「岩船港鮮魚センター」では、そんな地元の「鮭」を使用した名物「塩引鮭」を食べることができます。

「寝かせる」「磨く」「干す」という工程を経ることによってさらに熟成し、うまみを増すといわれる「塩引鮭」。その独特の風味と、絶妙な塩加減が食欲をそそります。

地元の生活に密着した共同浴場は「癒し」の時間

荒川沿いに佇む「雲母温泉」。共同浴場2軒のほか、2軒の旅館が営業する小さな温泉地です。

温泉地には “観光地的な雰囲気” がほとんどなく、地元の生活に密着しています。山あいの静かな環境と温泉地の素朴な風情の相乗効果は、都会での日常生活に疲れた心と身体を癒すのにピッタリ。そんな雰囲気の中に佇む「上関共同浴場」「雲母共同浴場」で温泉を堪能すれば、その「癒し」効果は倍増です。

にぎやかな観光地で過ごす休日も楽しいですが、たまにはこんな素朴な温泉でゆったりと「癒し」を感じに行きませんか。