【入場無料】温泉好きは絶対行くべき!準備期間1年の「温泉〜江戸の湯めぐり〜」が奥深すぎた

寒い冬に行きたいところといえば、お布団……ではなく、温泉!

古くより日本人は温泉好きが多いと言われていますが、昔の日本人は温泉をどう楽しんでいたのでしょうか。

今回ご紹介する企画展「温泉〜江戸の湯めぐり〜」は、そんな素朴な疑問に答えてくれる絶好のチャンス。なんと、入場料は無料です!!

貴重な歴史資料がずらり!「温泉〜江戸の湯めぐり〜」

企画展の巨大ポスターにわくわく!

企画展「温泉〜江戸の湯めぐり〜」がおこなわれているのは、東京・千代田区の「国立公文書館」。

ふだんはなかなか訪れる機会がないかもしれませんが、じつは誰でも入れます。

しかも、入場料が無料! 事前に手続きすれば、公開されている貴重な公文書を見ることもできるんです。

現代と違う!江戸の箱根温泉を知る『七湯集(しちとうしゅう)』

『七湯集』

展示会で最初に並べられているのは、箱根温泉を紹介する『七湯集(しちとうしゅう)』。

弄花(ろうか)と文牕(ぶんそう)の2人が、「箱根七湯」と呼ばれた当時の箱根一帯をくまなく調べ歩いてまとめた本です。繊細で鮮やかな挿絵とともに、温泉の入り方や効能を紹介しています。

現代に出版されても売れそうなくらい、詳しくて読みやすそうです。

これが問題の(?)シーン

なかでも気になるのが、着物を着た女性と裸の男性が一緒に湯屋にいる図。これって大丈夫なんでしょうか……?

この女性は「湯女(ゆな)」と呼ばれる人で、温泉や銭湯などでお客さんの背中を流すなどのサービスをしていたそうです。

幕末の下田の温泉『豆州下田温泉名所記』

『豆州下田温泉名所記』

『豆州(ずしゅう=伊豆)下田温泉名所記』には、幕末の下田の温泉案内の様子が載っています。

現在目にする地図や航空写真と変わらないと言ってもいいほどの正確な地図に驚かされます。

Google Mapsの3Dモードと比較してみました。

幕末の下田ということで、教科書に出てくるアノ船も描かれています。詳しいことは、実際に訪れて確かめてみてください!

江戸時代の温泉研究・蘭学者の研究書も

江戸時代には、温泉の効能の研究も行われていました。中国由来の「本草学(ほんぞうがく)」の中で、漢方薬と同じように病気や怪我への効果が研究されていたのです。

東洋の本草学だけでなく、西洋の蘭学の観点からも、温泉の研究が行われていました。

オランダの化学書を翻訳した『舎密開宗』

宇田川榕庵(うだがわ ようあん)による『舎密開宗(せいみかいそう)』は、オランダの化学書を翻訳し、自分の考察とともにまとめた本です。

◯硫泉ハ敗卵臭アリテ著ク知ベシ其氣銀器ニ觸テ黑鏽ヲ生シ氣ニ中レバ溷テ硫黃沈ム。

「硫泉」「敗卵臭」といった言葉から、硫黄の説明をしているようだ! と気づいたかもしれません。現代語に訳すと、以下のようになります。

◯硫黄泉は腐った卵のにおいがあって、よく知られている。そのガスが銀器にふれると黒錆を生じ、空気にふれると濁って硫黄が沈む。

江戸時代から、硫黄泉の独特のにおいは「腐った卵」にたとえられていたのですね。

まだまだ古文書がたくさん! 知られざる江戸時代の温泉の世界へ

企画展は三部構成。第一部が「名所案内にみる温泉風景」で、各地の温泉を描いた絵図が展示されています。

第二部は「江戸の温泉文化」。先ほど紹介した研究書だけでなく、温泉に行くための許可を得る書状「湯治願」や、旅行記も展示されています。温泉に行くのに届け出が必要だったとは、驚きです。

第三部は「あの人も温泉へ」と題し、武田信玄や豊臣秀吉など歴史上の有名人物が温泉に行った記録を展示しています。「信玄の隠し湯」「太閤の湯」といった言葉があるように、教科書に出てくる歴史上の人物も、温泉好きだったようです。そう思うと、なんだか親近感がわいてきます。

準備期間は1年! 企画者の方にインタビュー

絵図から手紙まで、さまざまな種類の歴史資料をもとに江戸時代の温泉文化を紐解く企画展。展示担当の方にインタビューをしました。

資料集めに一苦労 展示のウラ話

温泉部

とても勉強になりました! 温泉好きとして、このような展示を無料で見られるのは最高にうれしいです!

展示担当さん
ありがとうございます。
温泉部

どうして温泉の展示を企画されたのですか?

展示担当さん
冬の企画展を任されることになって、温かいイメージで冬に合うものをということで企画しました。

温泉部

準備にはどれくらいかかったんですか?

展示担当さん
1年くらいかかりました。

温泉部
1年もかかるとは、びっくりしました。どうやって温泉が出てくる資料を集めたのですか?

展示担当さん
まずは、現代に引用されている研究書を読んで調べます。また、『古事類苑(こじるいえん)』という、キーワードごとにそれが出てくる部分をひたすら引用した百科事典があります。

今ではインターネットでも見られるので、ここで展示していない温泉関係の資料も探せますよ。

温泉部

恥ずかしながら、そのようなサービスがあることはまったく知りませんでした。今度使ってみます……。

温泉関係の資料が探せる『古事類苑(こじるいえん)』

温泉部

展示物を準備する上で大変だったことはなんですか?

展示担当さん
やはり、史料解釈です。状況の解釈が難しかったです。

たとえば、伊香保温泉のお湯を汲(く)ませてほしいという大名の書いた湯治願の書状では、大名がどこにいて、お湯を汲んでどうするのかが書いてありません。

状況がまったくわからないのです。史料にある通り、「大名が伊香保温泉のお湯を汲もうとした」ことしかわかりません。

ただ資料を集めて並べるだけではなく、どんなことが書かれているか、どんな目的で書かれたかなどを解説してくれているのが、この企画展。

展示担当の方々の努力に思いをはせ、一つ一つの展示物をしっかり見ようとあらためて感じました。

温泉の歴史を紐解くと見えるものとは?

温泉部

展示の企画を進める中で、温泉について考えたことはありますか?

展示担当さん
江戸時代は湯治が第一だったというのが、現代とは異なるとあらためて感じました。現代は観光が(温泉旅行の)中心となっていますよね。江戸後期には観光の流れもありましたが、湯治と観光の、両方の側面がありました

温泉部
どうして江戸時代に絞って展示を行っているのですか?

展示担当さん
私が江戸時代を専門にしているというのもあるのですが、一番の理由は「庶民の目線で紹介したかったから」です。

古代は天皇や貴族などの身分が高い人が温泉に行った記録しか残されていません。しかし、近世(江戸時代)になると、一般庶民や幕臣(武士)の記録が出てきます。お伊勢参りの口実をつけて温泉に行こうとするなど、庶民も温泉旅行を楽しんでいたことがわかっています。

温泉部

最後に、この展示の一番の見どころを教えてください。

展示担当さん
個人的な見どころは、湯治願です。他の資料は、国立国会図書館など他の施設にあったり、古書店で売られていたりするものも多いですが、これは「一点物」で、国立公文書館にしかない貴重な資料です。

また、『七湯集』と『神社仏閣道中記』は、約2週間ごとに展示するページを変えています入場無料ですので、また見に来てください!

温泉部
お話を聞かせてくださり、ありがとうございました! また来ます!

企画展の詳細情報:特別プレゼントも!

豊富な資料から江戸時代の温泉文化をひもとく企画展「温泉〜江戸の湯めぐり〜」。

開催期間や休館日などの基本情報をお伝えします。

「温泉〜江戸の湯めぐり〜」の開催期間・休館日・入場時間

会場 国立公文書館
開催期間 2019年1月26日(土)〜3月9日(土)
営業時間 9時15分〜17時00分
休館日 毎週日曜日・祝日
入場料 無料
住所 東京都千代田区北の丸公園3-2
アクセス 東京メトロ東西線 竹橋駅1b出口から徒歩5分
電話番号 03-3214-0621
URL http://www.archives.go.jp/exhibition/index.html

期間中に、企画者によるギャラリートークが行われます!

開催日は、2019年2月27日水曜日。14時から30分程度です。事前の申込みは不要なので、気軽に参加できます。

手作りのすごろくとSNS投稿特典:特別プレゼントは2種類!

入場無料な上に、プレゼントまでもらえちゃうかもしれません。

#江戸の湯めぐり」をつけてSNSに投稿すると、先着300名でプレゼントがもらえるそうです。

なんと、展示物はすべて写真撮影OK(ただし、フラッシュライトの使用は禁止されています)。友達とシェアし放題です!これは投稿するしかない!

SNS投稿キャンペーンの案内

しかも、国立公文書館の職員が作成されたすごろくも配られています。「神社仏閣」「賭場」など、江戸時代の温泉旅行らしいイベントマスもある、素敵な作品です。

手作りすごろくは、入り口近くで配布中。

国立公文書館の企画展「温泉〜江戸の湯めぐり〜」では、入場無料で充実した資料を楽しめます。

ふだん中々入ることのない、古文書の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

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