花粉症に温泉は効く?おすすめ/NG入浴法も解説!スギ・ヒノキのない温泉地も紹介!

鼻水やクシャミ、目のかゆみ……。今年もつらい季節がやってまいりました。

そう、花粉症です。花粉症もちの人は、せっかく寒い冬が終わってうららかな陽気になったのに、外出もままならない日々が続きます。

温泉の力で、花粉症の症状を緩和できる効果的な温泉の入浴法は? 花粉の少ない温泉地は?

こうした花粉症と温泉にまつわる疑問に、一つずつお答えします!

花粉症に温泉は効く?

温泉の適応症(いわゆる効果効能)に、「花粉症」や「アレルギー」はありません

しかし、温泉に入って鼻やのどの粘膜についた花粉を洗い流したり免疫力を高めたりすれば、花粉症の症状の改善につながるでしょう。

花粉症の症状をおさえるには、体内に花粉をなるべく取り込まないことが重要です。鼻やのど、目などの粘膜についた花粉を洗い流すことで、多少なりとも症状を抑えることができるでしょう。

湯気で満たされた浴室にいると、粘膜がうるおされ、鼻やのど、目の粘膜についていた花粉が身体の外に流れるのを助けると考えられます。

また、温泉に入って血流が良くなることで、鼻の血管のふくらみが解消され、鼻づまりが改善されるといわれています。鼻づまりの日に、お風呂に入るといつの間にか鼻の通りがよくなっていたことがある方も多いはず。

 

また、水風呂に入って自律神経を刺激することが、免疫力向上につながるともいわれています。熱いお風呂と水風呂とを交互に入る「温冷交互浴(交代浴)」は様々な効果があり、全体的な体調の改善も期待できるでしょう。

もちろん、露天風呂では花粉が舞っているので要注意。スギやヒノキの木がない温泉地以外では、内風呂がおすすめです。露天風呂で使ったタオルにも花粉がつくので、湯上がりにタオルを洗うと安心です。

熱いお風呂は逆効果!おすすめの入浴法

熱いお風呂に入って、身体が痒くなったことはありませんか?

皮膚にある痒みや痛みを感じる器官は、43℃以上の熱で活性化します。花粉症などのアレルギー症状で分泌されて痒みを誘発する「ヒスタミン」だけでなく、熱や物理的な刺激でも、皮膚が「かゆい!」と反応するのです*

そのため、花粉症の症状が出ているときは43℃以上のお湯はNG。全身がかゆくなってしまいます。

効果的な入浴法は、38~40℃程度のぬるめのお湯にじっくりつかること。体温と近い温度のお湯は刺激が少なく、かゆみや炎症を抑えてくれるはず。

また、じっくりお風呂につかることで、湯気をいっぱい吸い込んで鼻の粘膜がうるおされるでしょう。

* 出典:大塚篤司「43度以上のお風呂は『熱い』だけじゃなく『かゆい』? 皮膚科医が語る意外な理由」- AERA dot(2018年10月21日)

1,200m以上には杉が生えない!

花粉症の最大の原因は、スギ。スギの木の生えていないところに行けば、きっと症状が緩和されるでしょう。

地域によって差はありますが、スギは標高千数百メートルより高いところでは育ちません*。もちろん、北海道の大部分や南西諸島・奄美群島でもスギは育ちません。

こうした環境のところに「避難」するのも、花粉症の方にはおすすめです。

温泉旅行に行くと、ふだんと異なる環境で過ごすことで心身の調子が整えられるといわれています。これを「転地効果」といい、温泉の効果のひとつに数えられています。

花粉のないところにいけば、花粉症の症状が抑えられるだけでなく、ムズムズしてつらい日常から逃げ出せて心も穏やかになるでしょう。

* 平によれば、「スギ垂直分布の上限は、分布している地域の標高と積雪量及び過去の植物分布によって左右される。東北地方では1,000m前後、本州中部地方では2,000m前後、近畿地方では1,500m、九州地方では1,800m前後」(平,2004:48)です。
出典:平英彰(2004)「垂直分布の上限に生育するスギ」,『森林科学』40:48-52.※リンクから論文のPDFファイルが開きます。

高いところで花粉を避けよう!関東近郊のおすすめ温泉

スギが生えない標高の高い山の中に、たくさんの素晴らしい温泉があります。

国土地理院の「地理院地図」では、地形図データを無料で公開しています。好きな高さで好きな色に塗り分けられる「自分で作る色別標高図」を利用し、標高の高い温泉を探してみました。

標高1,300m以上の温泉の集中する関東近郊の温泉地をご紹介します。いずれも首都圏から一泊二日で充分楽しめるところにあり、日帰り入浴も受けつけています。花粉症から逃れる温泉旅行はいかがですか。

花粉とおさらば!標高の高い温泉その1:万座温泉(群馬県)

万座温泉の景色

万座温泉は、草津温泉から白根山を隔てた山の中にある群馬県の温泉地です。標高はおよそ1,800mほどと、関東地方の温泉地としては有数の高さをほこります。

泉質は「酸性硫黄泉」が主で、白濁した濃厚なお湯が特徴です。酸性泉や硫黄泉は、殺菌作用や皮膚の角質をとかす作用があり、アトピー性皮膚炎や思春期ニキビなどへの効果効能が期待できます。お肌のトラブルを抱えた方にもおすすめの温泉です。

空気がきれいで、夜は星空も美しい万座温泉。花粉が少ないため露天風呂でのんびりと雄大な山々や広い空をながめられます。

花粉とおさらば!標高の高い温泉その2:熊の湯・硯川温泉(長野県)

スキーの聖地・志賀高原の奥にある「熊の湯温泉」「硯川温泉」。こちらも標高およそ1,800mと非常に高いところにあり、空気がきれいです。

熊の湯温泉の特徴は、ヒスイのように美しいエメラルドのお湯。硫黄たっぷりの濃厚な濁り湯です。

泉質は「含硫黄ーカルシウム・ナトリウムー炭酸水素塩・硫酸塩泉」。傷を負った子熊がお湯につかっていたという伝説もある、効能豊かな名湯です。

硯川温泉(ほたる温泉)も硫黄泉。日によって色を変える濁り湯で、熊の湯のようにエメラルドグリーンの日もあれば、青っぽくなったり淡緑色になったりします。

花粉とおさらば!標高の高い温泉その3:奥鬼怒温泉郷(栃木県)

奥鬼怒温泉郷は、鬼怒川の源流部にある秘湯の温泉郷です。標高1,340~1,450mほどのところに4軒の一軒宿が点在しており、登山客や温泉ファンの人気を集めています。

女夫渕(めおとぶち)から先はマイカー規制がされており、徒歩か宿の送迎でのみアクセスできます。7~8kmほどの道のりで、標高が高いため一年を通して涼しく、歩けばハイキング気分も味わえます。

秘湯情緒だけでなく、泉質の多彩さも奥鬼怒の魅力。宿ごとの主な泉質を表にまとめました。

「奥鬼怒温泉郷」の詳細情報

旅館名
(リンク先は公式HP)
泉質
加仁湯 硫黄泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉・単純泉
八丁の湯 単純泉
手白澤温泉 単純硫黄泉(硫化水素型)
日光澤温泉 硫黄泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉

名古屋からは「奥飛騨温泉郷」もおすすめ!

岐阜県北部、北アルプスの中腹に点在する「奥飛騨温泉郷」。最奥の「濁河温泉(にごりごおんせん)」は標高1,785mと非常に高いところにあります。

通年営業している温泉地としては、先ほどご紹介した万座温泉と日本最高所を争います。

市営の露天風呂(冬季休業)は、夏も涼しい山の爽やかな風をあびながら温泉を楽しめます。秘湯情緒漂う飛騨の名湯は、登山客だけでなく温泉好きも惹きつけています。

泉質は「ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉」。その名の通り、淡く濁ったお湯が特徴です。

スギ・ヒノキのない北海道や離島のおすすめ温泉

北海道 大雪山 旭岳 ロープウェイ

北海道の大部分や、奄美群島・南西諸島などの離島は、花粉症の主な原因であるスギやヒノキが生えていません。これらの地域ならば、花粉症の人も、春でもゆったり温泉を楽しめます。

スギ花粉から逃れよう!北海道のおすすめ温泉地3選

スギやヒノキがほとんど生えない北海道ですが、花粉症の方にとって脅威となるのがシラカバ・ブタクサ。シラカバは4~6月ころ、イネ科の植物は6~8月くらいに花粉のピークを迎えるため、一年の半分以上を花粉症で苦しめられる人も少なくありません。

花粉から逃れて北海道に出かけるなら、2月~3月がおすすめ。閑散期のため全体的に空いていて、のんびり過ごせます。雪におおわれて草木が育っていない時期なので、花粉とは一切無縁

いまはシラカバやイネ科の植物の花粉に対してアレルギーがなくても、吸い込み続けることでアレルギーを発症するおそれがあります。花粉のない時期に北海道のきれいな空気を吸いに行きましょう!

札幌市内とは思えない絶景の巨大雪見風呂!豊平峡温泉

札幌市街から車・バスで1時間半ほどとお手軽に行けるのに、山に囲まれた秘湯情緒あふれる温泉が「豊平峡温泉(ほうへいきょうおんせん)」。

定山渓温泉の奥にある日帰り専門の温泉です。大きな露天風呂で水車を眺めながら入るのはなんとも風流。周囲の山々は、紅葉や雪など、四季折々に表情を変えてくれます。

意外な名物がインドカレー。インド人シェフが作る超巨大ナンと本格カレーの組み合わせはたまりません!

冬こそ行きたい! タウシュベツ川橋梁&源泉かけ流し「ぬかびら源泉郷」

帯広から車・バスで1時間半ほどのところにある「ぬかびら源泉郷(糠平温泉)」も、冬こそ訪れたい名湯。本州ではスギ花粉が飛び始める2・3月でも、標高の高いぬかびらはまだまだ冬です。

すべての旅館が「源泉100%かけ流し」。お湯にこだわったお風呂で、ゆったりと癒やされてみてはいかがでしょうか。

近くにある「タウシュベツ川橋梁」は、戦前に造られたアーチ橋の遺構。凍ったダム湖から優美な姿を見せてくれます。

ぬかびら源泉郷のある上士幌町(かみしほろちょう)は、過去に「花粉症疎開ツアー」が企画されたほど花粉と無縁な町。近年では東京のIT企業が、花粉症の社員のためにサテライトオフィスを構えたことも話題になりました。

石油のような珍湯!アトピー療養の最先端「豊富温泉」

北海道北部、宗谷地方の「豊富温泉」は、石油のような油分たっぷりのお湯が特徴。

日本最北の湯治場としても知られ、近年ではアトピー性皮膚炎の療養にも力を入れています。

雄大なサロベツ原野の中にたたずむ小さな温泉地。花粉のことを忘れてのんびりと温泉につかっているうちに、体調が整えられるのではないでしょうか。

スギやヒノキのない離島の温泉

沖縄県 西表島 

沖縄・奄美・小笠原など南の離島では、花粉症の原因となる植物がほとんど生えていません。

こうしたエリアも花粉症が皆無なわけではありません。わずかながらスギが植えられているほか、サトウキビやマツなどのアレルゲンもあります。それでもスギ花粉に悩む人にとってはかなり快適に過ごせるはずです。

花粉症から逃れるには、島への旅もおすすめです。暖かい島で、花粉のない爽やかな夏を先取りしましょう!

沖縄・奄美の温泉

奄美群島では、花粉症の人を対象としたモニターツアーを行い、全員に症状の改善が見られたそうです*

沖縄にもスギがほとんど植えられていません。

沖縄・奄美にはあまり温泉がありませんが、奄美大島の「THE SCENE」や沖縄本土の「りっかりっか湯」西表島の「シギラ黄金温泉」などで温泉を楽しめます。

* 出典:「来年の花粉シーズンは是非、奄美へ」- あまみ便り

八丈島の温泉

本土から遠く離れ、スギのほとんどない八丈島も花粉症の人にとって天国の環境です。

花粉は風に乗って遠くまで運ばれますが、本土から300km近く離れた八丈島までは飛んできません。わずかに植えられたスギの花粉も、雨が多い島の気候のおかげで猛威をふるうことはないそう。

八丈島にはひなびた共同浴場や、ワイルドな露天風呂など、個性豊かな温泉が目白押し。東京都内とは思えない別天地のような環境で春を迎えてみませんか。

花粉症の症状をやわらげて楽しい春のお出かけを!

岩手県 

せっかく暖かくてうららかな気候になっても、お出かけを妨げる人類の敵・花粉症。

外出を控えて耐え忍ぶだけでは、目や鼻だけでなく心までもつらくなってしまうでしょう。

リフレッシュもかねて、花粉から逃れる温泉旅行に出かけてみてはいかがでしょうか。