「湯治(とうじ)」とは、温泉が持つ効果効能を利用し、病気を治療することを意味します。
ここでは、湯治がもたらす効果のほか、やり方や歴史などを解説。行楽目的とはひと味違った、温泉の活用法を学びましょう!
目次
1.湯治とは?どんな歴史がある?

湯治とは?
湯治とは、温泉宿に1週間以上の期間滞在し、温泉の効能を利用して病気の治療や療養を行うことを指します。
古くから日本にある医学的に認められた医療法のひとつとなっており、これが疲労回復や観光を目的とした一般的な温泉旅行とは異なる点です。
そのため、湯治を行う際は、訪れる温泉地や入浴方法などを事前に医師と相談する必要があります。
湯治の歴史
湯治の歴史は深いですが、古くは権力者など一部の人たちのみが行うものでした。現在のように一般の人の間にも浸透したのは、街道が整理されて温泉地への移動が楽になった江戸時代以降といわれています。
医学の近代化が図られた明治時代以降も、大分県別府温泉に陸軍病院と海軍病院が開設され、温泉療法が実施されていました。
現在では、癒しや娯楽として温泉を楽しむことが一般的となった一方で、鳥取県の三朝温泉のような病気の治療を目的とした“湯治場”に訪れて温泉を利用する人も少なくありません。
2.湯治の効果と湯治場

湯治の効果
湯治の本質は、温泉に入ることで人間が本来持っている自然治癒力を高めることといわれています。諸説あり温泉の泉質にもよりますが、アトピー性皮膚炎や腰痛、がんなどの治療への効果が期待できます。ただし、自分の判断のみで行うと逆に悪化する可能性もあるので注意が必要です。
「湯治場」は湯治を目的とした温泉地
世界でも有数の放射能泉である鳥取県の「三朝温泉」は、現代人に適した湯治スタイルを提案する温泉地と知られており、ラドン(微弱な放射線)を身体に取り込むことで、自然治癒力や免疫力を高められると評判です。
このように湯治を目的に用いられている温泉地「湯治場」(湯治の宿)が日本の各地に存在しています。
3.湯治のやり方とベストな滞在期間
湯治のやり方
湯治における一般的な入浴方法を解説します。しかし、先に述べた通り、病気に合わせた方法をとらないと逆に悪化することもあるので、事前に医師に相談することをおすすめします。
1.かけ湯をする
血圧の急な上昇や心臓への負担を減らすために、まずはかけ湯をしましょう。心臓から遠い、足→腰→胸の順でお湯をかけます。
2.いきなり肩まで浸からずに半身浴から
まずは半身浴から行い、お湯の温度に慣れてきたらゆっくり肩まで浸かります。内蔵など上半身の病気を抱えている人は、半身浴のみにとどめましょう。お湯は42℃未満のさほど熱くない温度が適しています。
入浴の回数は、多くても1日3回が限度。1回あたりの入浴時間も額にじっくり汗をかくくらい(3~10分程度)でストップを。長く入浴しすぎると、逆にのぼせるなど体調を崩すことも。
3.入浴後はなるべく温泉を流さない
温泉から上がったら、身体に付着した温泉をなるべく流さないように。ですが、湯ただれ(皮膚の炎症)を起こしやすいという人はシャワーなどで洗い流しても問題ありません。
4.水分補給を忘れずに
一般的な入浴やサウナと同じように、湯治の入浴の前後にもコップ1~2杯の水分補給はマスト。また、飲食をしてからの入浴も厳禁です。
“湯あたり”は吉兆の合図
湯あたりとは、温泉の成分によって引き起こされる体調不良のこと。湯治のような長期的な入浴で生じることが多く、倦怠感や頭痛、嘔吐などがこれに該当します。
身体はつらいですが、これは病気が快方に向かう兆候。入浴の回数を減らしたり、休養したり、様子を見ながら苦しみを乗り越えましょう。
湯あたりの症状が酷い場合は、無理せず医師に見てもらうようにしてください。
湯治における宿の滞在期間
本来は、2~4週間程度の滞在が一般的です。しかし、最近では忙しい現代人に向けた“プチ湯治”が注目を集めています。
プチ湯治は、生活習慣病の改善やストレス解消、疲労回復を目的に、2~3日程度温泉地に滞在して、心身ともに健やかな状態にするもの。週末などを利用して行う若者が増えています。
4.湯治を極めるなら宿で自炊!
先に述べた通り、湯治は1週間以上の長い期間滞在して治療するスタイルでした。その際は、金銭的な負担や、病気による食事制限を理由に、自炊するのが基本となっていたんです。
現在もその名残を残し、自炊湯治ができる宿が全国にあります。そういった宿では、調理場はもちろん、包丁などの調理器具も借りられることが多いですが、調味料の類は持参するようにしましょう。調味料は現地で調達することもできますが、万が一購入できないことを想定して、自宅から小分けにして持ってくるのがおすすめです。
料理のメニューは、比較的簡単につくれる麺類にする人が多いようです。せっかくなのでご当地料理が食べたいという人は、滞在地で食材を買って調理するといいですよ。
5.湯治滞在ができる“湯治の宿”
湯治目的での利用を想定し、長期間の滞在できる“湯治の宿”。ここでは特におすすめの施設を厳選して紹介します。
「神風館」(新潟県魚沼市・栃尾又温泉)
“1週間入れば1年間風邪をひかない”といわれるラジウム温泉の名湯。アトピーなどの慢性皮膚病、不妊症などの婦人病、痛風や神経痛といった病気を治癒する効果が期待できます。
「中伊豆大見の郷 湯治場21 大見山荘」(静岡県伊豆市・梅木温泉)
お風呂は伊豆屈指の泉質の良さを誇り、高血圧、動脈硬化、外傷、慢性皮膚炎などに効果的。数日滞在する“プチ湯治”が行え、自家菜園で育てた無農薬野菜を使った料理が堪能できます。
「油屋」(鳥取県東伯郡・三朝温泉)
江戸時代から営業している老舗旅館。部屋に備え付けのキッチンで料理がつくれるほか、1か月以上滞在すると宿泊費が1割引きになるのがポイントです。
「湯田山荘」(島根県安来市・比田温泉)
比田温泉は薬効高い湯治湯として有名で、こちらの「湯田山荘」にも多くの客が訪れています。長期滞在はもちろん、日帰り入浴も可能です。
「大黒屋」(大分県別府市・鉄輪温泉)
女将さんの温かい人柄で人気。温泉の蒸気で調理する「地獄蒸し」で自炊できるのが特徴で、近所で食材を買って楽しむ人が多いのだとか。
「妙見館」(鹿児島県霧島市・妙見温泉)
温泉はすべて厳選かけ流しで、“腰痛の名湯”として多くの人に愛される湯治の宿。自炊での宿泊だけでなく、日帰りや賄付きなど、さまざまなスタイルで利用できます。
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湯治で心と体を癒やして
温泉が持つ効果効能を利用し、病気を治療する「湯治」。古き良き日本が継承する素敵な療養文化は、行楽目的とはひと味違った温泉の魅力を継承します。心と体が弱ったなと感じたら、ぜひ湯治へ出掛けてみてください。たまりきった日頃の疲れやストレスが、きっと癒されるはずです!
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