サウナブームで注目されている「交互浴」を、江戸時代から続けている温泉があります。
主役は13℃の水風呂。自然に湧き出す冷たい「温泉」につかれば、いつの間にか全身に力がみなぎる感じがします。
夏しか入れない、大分県九重の不思議な名湯「寒の地獄」に行ってきました。
目次
「温泉」なのに13℃!?

家族連れでにぎわっていたのに、入浴する人は僕だけでした。
灼けるような日差しの照りつける町を離れ、標高1,100mの寒の地獄へ。宿に着いた時点で既に涼しいですが、さらに涼しい世界が待っていました。
水着に着替えて冷泉に身を沈めると、ブルッと身震いする寒さに身を包まれます。
入ってから3分くらいは冷たく感じるものの、だんだん慣れてくるそう。半信半疑で「慣れてくる」のを待ってみます。

澄み渡る冷泉の泉質は、硫黄泉。ふんわりとしたやさしい香りが漂い、手触りも刺激というよりとろみやまろみに近いです。
硫黄泉についてもっと詳しく
硫黄泉(硫黄温泉)とは?効能や人気おすすめ温泉宿4選

湯舟の底にゴロゴロと転がる岩の間から湧き出す冷戦を眺めたり、水風呂に挑戦しようとする親子の歓声を聞いたりしながら過ごしていると、10分ほど経ってきました。
なるほど、慣れると冷たさを感じなくなるものです。それでも時間がたてば全身が冷えてくるので、各自のタイミングで上がるのだそう。
水風呂→サウナの”逆交互浴”でととのう

慎重に水風呂を出て、すぐさま湯小屋の隣に立つ暖房室へ。

ストーブで全身をあたため、「温泉成分をあぶり込む」のが寒の地獄の楽しみ方だそうです。

2022年に導入された薪ストーブは、昔懐かしい見た目で、火力も頼もしいです。少しずつ向きを変えて、10分くらいかけて全身をよくあたためます。
そのあいだ、パチパチと薪の爆ぜる音を聞きながら、壁一面に書かれた落書きを眺めます。
水風呂の入浴記録や、陸上大会の勝敗などが数十年分残されています。
当時合宿で泊まりに来た選手たちは、今も家族を連れて寒の地獄に来ているのでしょうか。昔の常連さんに思いを馳せました。
観音様を拝みながら、もう1セット

寒の地獄には2つの湯舟があり、いずれも混浴です。
最初は脱衣所に近い左側の湯舟につかったので、今度は右側へ。
なんとなく右のほうが温度が高く感じる! という声を聞いて、一度身体が冷えた後の2回めにふさわしいと思いました。

右側には祠があり、仏様に見守られながら「霊泉」の効能を感じられます。
「冷却心身養禅心」──水風呂につかっているとまさに無心になれます。
昔の人達がこの冷泉に神聖さや神秘を感じたのも、なんだかわかる気がします。

壁にかけられた「冷泉行進曲」。長期滞在する湯治客がみんなで考えたのだろう、ユーモラスな歌詞が5番まで続いています。
メロディーは全然想像つかないのですが、病が良くなることを祈って、頑張って冷たい水風呂につかった昔の湯治客の姿が頭に浮かびます。
2セット目の入浴時間は15分、3セット目は7分ほどでした。30分以上入っていられる人もいるそうですが、体質や体調に合わせて無理のない範囲で楽しみましょう。
ドバドバ湧き出す飲泉も体験

豊富に湧き出す冷泉のお風呂の隣に、飲泉コーナーがありました。

後ろにある湯呑みで、勢いよく流れる冷泉をすくって飲みました。
ほろ苦い硫黄の味と、水そのものの旨さのような心地よいミネラル味が感じられ、硫黄泉の飲泉としてはかなり飲みやすく感じました。
冷泉に入れるのは7月から9月の夏季限定

寒の地獄旅館は加温のお風呂もあるため、冬でも安心して入れます。
冷泉の水風呂に入れるのは、7月から9月の3ヶ月間だけ。
冷泉は混浴なので、水着を持参しましょう(受付で購入もできます)。
2022年の夏には冷泉プールも登場し、小さな子どもも冷たい温泉を楽しみるようになっていました。

奥には薪がたくさん積まれています。通年入れる薪で加温した温泉もあるため、薪は欠かせません。
寒の地獄旅館はレトロな建物も素敵!

寒の地獄旅館は、昭和3年の創業。時間の流れを感じる杉板の壁と、黄土色の土壁が重厚さと親しみやすさを同時に感じさせてくれます。

枯山水のように見えるのは、硫黄分を含む温泉が流れているため。
お風呂の中では透き通る透明だったのに、外に流れるときは湯の華で真っ白になっています。

近くのレストハウスで、風呂上がりのソフトクリームをいただきました。牛乳の味がしっかり感じられて美味しかったです。
「寒の地獄旅館」の詳細情報
施設名 | 「寒の地獄旅館」 |
---|---|
住所 | 大分県玖珠郡九重町田野257 |
電話番号 | 0973-79-2124 |
日帰り入浴の営業時間 | 金曜日~火曜日(水木休み) 10:00~14:00(13:00最終受付) |
冷泉の営業時間 | 7/1~9/30の木〜火曜日(水曜は休み) 9:00~17:00(16:00最終受付) |
利用料金 | 温泉700円、冷泉1時間700円〜(時間によって変わります) 1泊2食付13,500円+税・暖房代 |
アクセス | 豊後森駅・豊後中村駅から九重町コミュニティバス 九重ICから車で約25分 |
URL | http://kannojigoku.jp/ |
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