温泉施設のコロナ対策ガイドラインを要約してみた【日本温泉協会】

※2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置づけが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に変更され、業種別ガイドラインは廃止されます。

安全で楽しい温泉旅行をするために気をつけるべきことは何でしょうか。

日本温泉協会が2020年6月24日(水)に発表した「温泉施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第2版)」では、温泉旅行のシーン別に注意すべきポイントが詳細にまとめられています。

このガイドラインは事業者向けですが、内容を知ることで旅行者・利用者にとっても参考になるでしょう。

日本温泉協会から特別な許可をいただいて、旅行者・利用者向けに要約してみました。

感染対策には従業員と利用者双方の理解・協力が不可欠

ガイドラインでは従業員向けの対策が書かれていますが、利用者である私たち自身も新型コロナウイルスをうつさない・うつらないために感染対策に協力する必要があります

この記事では利用者の目線からガイドラインを読み直して要約し、適宜補足をしています。

また、旅行全般で注意すべきポイントが簡潔にまとめられたものとして「新しい旅のエチケット」もあります。

最後に「新しい旅のエチケット」も解説します

新型コロナウイルスは飛沫感染と接触感染に注意!基本的な対策をおさらい

新型コロナウイルスは、飛沫感染接触感染の主に2通りの経路で感染します。

飛沫感染とは、ウイルスに感染した人の咳やクシャミ、ツバなどを通して感染することです。
これを防ぐために、お互いの飛沫が届きにくい2mを目安にした「ソーシャル・ディスタンス」や、ツバ・クシャミの飛散を減らす/鼻や口に入りにくくするためのマスク着用などが呼びかけられています。
三密」と呼ばれるウイルスの感染が起こりやすい状況(密閉・密集・近密)を避けたり、こまめに換気したりするも、飛沫感染を防ぐ上で有効です。

接触感染とは、ウイルスがくっついた物に接触して感染することです。
これを防ぐために、こまめな手洗い・消毒や、共用物(ドアノブや手すりなど)の消毒が呼びかけられています。

※これらの他にも、空気中にウイルスが浮遊して起こる「空気感染」が報告されています。

温泉旅行においても、これらの対策は欠かせません

温泉施設と新型コロナウイルス……気をつけるポイントは?

新型コロナウイルスは、お風呂のお湯程度の温度では死滅しません。そこで、お風呂の中でも「三密」を避けたり換気をしたりして感染拡大防止を図る必要があります。

密を避けるには、「時間帯をずらす」「場所をずらす」の2つの方法があります。場所をずらすには、混んでいる施設の利用そのものを避けることもできますが、列の間隔を十分にとったりロッカーの位置を離したりすることで対策できます。

お風呂の中ではマスクはできないもの。飛沫感染を防ぐために、大きな声でしゃべらないクシャミや咳をするときはヒジで口元を覆うなどの対策が考えられます。

また、感染が疑われる症状がないかこまめに確認し、症状がある場合はすぐに休むことも重要です。具体的には、発熱・だるさ・咳・痰・呼吸困難・味覚異常・嗅覚異常などです。
従業員だけでなく、利用者である私たち自身も、こうした症状がある場合は外出を控えてすぐに医療機関を受診しましょう

感染対策を公開・収集して安全な旅に(温泉部補足)

施設の特性に合わせて、感染対策には違いがあります。どんな対策を取っているのか、利用する際はどんなことに気をつければいいのか、ホームページや施設の入口などでチェックすると安全な旅に役立ちそうです。

高級ホテル「八芳園グループ」は、感染拡大防止対策として32項目の自由に使えるピクトグラムを公開しています。従業員の方にとっては対策やポスターづくりの参考になるかもしれません。私たちにとっても、注意すべき点を明確に知ることができます。

シーン別チェックポイント(全13シーン)

  1. 送迎:こまめな換気・消毒を心がけ、ゆとりをもって乗れるよう注意する
    普段から同居している家族同士なら「密集」を今更気にするにもおよびませんが、他人同士や普段離れて暮らしている家族は、三密を避ける必要があります。
  2. ロビー:手指の消毒・感染が疑われる症状がないか確認・待つときは十分な間隔
    温泉施設に限らず、建物に入るときは手指の消毒などを心がけましょう。
  3. チェックイン:案内を簡略化するなどして接触を最小限にする・感染拡大対策を知る・非接触型も
    パンフレットやスマホなどを利用した非接触型のサービスも一部の施設で試行されています。
  4. 客室へ:手すりの消毒
    廊下に消毒液があれば、お風呂や食堂などの共用施設を使う前後に利用できて便利です。
  5. エレベーター:消毒・密を避ける
    大声で話さない、混雑していたら利用を避ける・ずらすなどがポイントです。
  6. 客室:換気を心がける・他人と相部屋になる場合は互いに同意する・スタッフとの接触は最低限に
    窓を小さく開ける分には、エアコンの効果を損なうことなく十分に換気できます。
    また、出張や親族旅行などで同居していない人と同じ部屋になる場合は特に、お互いに体調を確認しておきましょう。
  7. 脱衣所・休憩所:混雑する時間帯を避ける、ソーシャル・ディスタンス、大声の会話を控える
    チェックイン直後や食事の前後などは、お風呂が混みやすくなります。食事の時間帯とあわせてずらせば混雑が緩和され、密を避けることにつながります。
  8. 浴室:全身を石鹸でよく洗う・大声の会話を控える・咳エチケットに注意・こまめな換気
    こまめに手を洗うように、飛沫がつきやすい顔もよく洗うと感染拡大防止に効果的です。
  9. 食事:ソーシャル・ディスタンスの確保、大声の会話を控える、食器などの共用を避ける
    普段同居しない家族との食事などでは、十分な距離をとって飛沫感染を防ぎましょう。
    宴会ではお酌や回し飲みなどを控え、会話も控えめに。できれば時間も短めにしましょう。
  10. 遊技場:消毒、ソーシャル・ディスタンス、大声での会話を控える
  11. 喫煙室:混んでいる時間帯を避ける
  12. チェックアウト:混雑する時間帯を避ける・非接触型のサービスも
    時間帯をずらすなどして三密を避ける他、キャッシュレス決済・事前決済などで金銭の受け渡しに伴う接触を避けることもできます。
  13. お見送り:握手などは避けて口頭や仕草でお礼を伝える

以上、13項目にわたって注意点をご紹介しました。

温泉旅行におけるコロナ対策も、こまめな手洗い・消毒・換気、密を避ける、体調チェックなど、日頃から心がけていることの延長線上にあるといえるでしょう。

黙浴・黙サウナで安全に温泉を楽しもう!

飛沫感染防止のため、「黙浴(もくよく)」「黙サウナ」を呼びかける温泉施設が増えています。

お風呂やサウナではマスクを外して入るため、大きな声での会話は周囲に飛沫を飛ばしてしまい、ウイルスを知らず知らずのうちに広めてしまうかもしれません。

また、静かに温泉を楽しみたい方がいるのは、コロナ禍でも、コロナ前でも同じです。

家族や仲間と「裸の付き合い」でついつい会話が盛り上がってしまうこともあるかもしれませんが、温泉をじっくり楽しむ気持ちで「黙浴」を心がけてみてはいかがでしょうか。

「新しい旅のエチケット」を守って楽しい温泉旅行を!

出典:観光庁

先程ご紹介したシーン別のコロナ対策も、「新しい旅のエチケット」を覚えることですっきり理解できるでしょう。

旅行におけるコロナ対策を覚えやすくまとめており、具体的なシーンに応用できます。

  • 旅先の 状況確認、忘れずに
    目的地の感染状況や、施設の営業状況・コロナ対応などをチェックしておきましょう。
  • マスク着け、私も安心、周りも安心
    マスクはウイルスの飛沫感染を防ぐために有効です。
  • 楽しくも、車内のおしゃべり 控えめに
    大声で話すと飛沫が飛び散る範囲が広がってしまいます。
  • 旅ゆけば、何はともあれ、手洗い・消毒
    手などに付着したウイルスが鼻や口に入ることで感染しやすくなります。
  • 混んでたら、今はやめて、後からゆっくり
    密集を避けて、空いている場所や時間帯を選ぶのもおすすめです。
  • 握手より、笑顔で会釈の 旅美人
    握手やハグのような近密な接触を避けましょう。
  • おしゃべりを ほどほどにして、味わうグルメ
    食事中はマスクを外しています。周りのお客さんに飛沫が飛ばないよう大声は遠慮しましょう。
  • 間あけ、ゆったり並べば、気持ちもゆったり
    バスや新幹線などの列は間隔(ソーシャル・ディスタンス)を意識しましょう。
  • こまめに換気、フレッシュ外気は 旅のごちそう
    密閉を避けるために、滞在先などではこまめに換気しましょう。
  • 毎朝の健康チェックは、おしゃれな旅の 身だしなみ
    検温などの健康チェックを心がけ、不調の際は旅行を控えて医療機関に問い合わせましょう。
  • おみやげは、あれこれ触らず 目で選ぼう
    人々が触った物を介してウイルスが感染することもあるので注意しましょう

「宿泊編」の新しい旅のエチケットも! 温泉旅館での注意点は?

2020年9月29日に、観光庁が「個別編」の新しい旅のエチケットを発表しました。

交通編、旅の飲食編、宿泊編、観光施設・ショッピング編の4つに分かれていて、全体版と一部は共通しながらも、場面別で気をつけるべきポイントが追加されています。

「宿泊編」は温泉旅館も意識した内容になっています。

  • COCOA入れ 準備完了、さあ出発!
    接触通知アプリ「COCOA」をスマホにインストールすれば、知らず知らずの陽性者との接触もわかりやすくなります。iOS, Androidいずれも対応しています。
  • こまめに換気、リフレッシュ外気は 旅のごちそう。
  • お風呂行こう 忘れないでね、タオルとマスク。
    お風呂の中ではマスクはできませんが、廊下や脱衣所などの共用スペースではマスクの着用を忘れないようにしましょう。
  • 大浴場、静かにゆったり いい湯だな。
    お風呂が混雑する時間帯を避けることで、快適に、安全に入浴できます。
  • 旅の夜、盛り上がっても マスク忘れず。
    飲食が終わっても会話に花が咲くこともあるでしょう。その際もマスクを忘れずに。
  • 毎朝の健康チェックは、おしゃれな旅の身だしなみ。

このほかのバージョンも、全体編になく新たに追加されたエチケットをみてみましょう。

交通編

  • 空いている時期、時間帯で、快適旅行。
    混雑する時期や時間帯を避けることで、快適・安全に移動できます。
  • 向き合えば、話が弾む、飛沫舞う。
    新幹線や特急列車の座席などを向き合って座るように回してしまうと、飛沫感染の可能性が高くなります。車内でのおしゃべりは控えめにすることと合わせて意識しましょう。

旅の飲食編

  • マスクして 話せば安心、食事の前後。
    マスクを外すのはあくまで食事中で、なるべくマスクを着用するようにしましょう。
  • 取り分けて、安心・安全 おいしい料理。
    大皿料理を複数人でつつくと飛沫感染のリスクが高まるので、なるべく小皿に取り分けていただきましょう。
  • 狭い場所、混んでる場所さけ安心ナイト。
    密閉・密集を避けるのがポイントです。
  • 旅の酒、忘れぬ旅のエチケット
    旅行中でも、感染防止を忘れずに楽しみましょう。

観光施設・ショッピング編

  • 予約とり、並ばずスムーズ 楽しい観光。
    混雑を避けるため、多くの観光施設が予約制となっています。事前にホームページなどで確認しましょう。
  • 盛り上がれ!叫べ、歌え、心の中で。
    スポーツ試合やコンサートなどのイベントも徐々に再開していますが、飛沫感染を防ぐために観戦中は大声をあげず静かに楽しみましょう。

安全で楽しい旅行のためのリンク集(Go Toキャンペーン等)

首相官邸「新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~」

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」

消費者庁「『新しい生活様式』の実践例を踏まえた新しい日常に向けて消費者に知っておいていただきたい事項
共通留意事項
(2) 娯楽・イベント:ホテル・旅館等
(3) 交通

定期航空協会「飛行機を安心してご利用頂くための航空会社と空港ビル会社からお客様へのお願い」(PDF)

国土交通省「鉄道利用者の皆様へ(新型コロナウイルス感染症対策の利用者向け情報)」

日本旅行業協会(JATA)「新型コロナウイルス感染症 関連情報」【事業者向け】

Go Toトラベルキャンペーン特設サイト
※Go Toトラベルキャンペーンは全国の緊急事態宣言が解除されるまで、全国で一時停止措置がとられています。

サウナ・スパ・銭湯(公衆浴場)のコロナ対応ガイドライン(リンク集)

浴場業(公衆浴場)における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン(PDF)

サウナ・スパ関連施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(PDF)

【補足】自分にできるコロナ対策をしよう

手に付いただけで蕁麻疹などが起こってしまうアルコールアレルギーの方や、読唇術でコミュニケーションをとっている聴覚障害をもつ方など、一般的なコロナ対策を取れない方もいます。

それぞれ、アルコール不使用の消毒液、フェイスシールドや一部が透明のマスクなどを利用することで対応できますが、中には代替策が簡単に用意できない事情のあるケースもあります。

また、体温調節機能の弱い幼児や高齢者にとって、真夏にマスクをつけて過ごすのは熱中症リスクを増大させることになります。

コロナをうつさない・うつらないためにそれぞれが自分にできる対策を取ることは非常に重要ですが、自分のやり方を周りの人に押し付けないのも大切です。

公衆衛生には多くの人の協力が欠かせません。自分のためにも、周りの人のためにも、安全に心がけて「新しい日常」を送りたいものです。