日本には数えるほどしかない、数分から数十分おきに温泉が噴き上げる「間欠泉」という激レア温泉なのに知る人ぞ知る秘湯となっている島根県の「木部谷温泉」に行ってきました。
お湯は鉄分たっぷりの超濃厚な赤茶色。肌がキシキシするほどの成分たっぷりのお湯に感激しました。
温泉が勢いよく噴き出す神秘的な姿を見てから入浴すると、ありがたみも増す気がします。
見て楽しく、入って気持ちいい島根県の知る人ぞ知る秘湯「木部谷温泉」の魅力をご紹介します。
目次
20分に1回噴き出す炭酸の間欠泉

木部谷(きべだに)温泉は島根県南西部の山奥にある秘湯の一軒宿。間欠泉は駐車場からさらに坂を登ったところにあり、僕が訪れたときは誰もいませんでした。
平らになったところに突如現れた源泉の池。赤茶色の温泉水で満たされていて迫力があります。間欠泉はまだ噴き出していませんが、温泉水が日の光を受けて鮮やかなオレンジ色に輝く様子はとても神秘的です。
間欠泉が湧き出す周期は約25分とのことで、しばらく源泉のまわりを散策して待っていました。

15分くらいして噴き出しはじめました。
おお、湧いてる湧いてる!
1mほど温泉水が噴き上げ、奥の池に注いでいます。池からはさらに水路が出ていて、水路に流れ込む水の量もどっと増えました。

「噴いてふきでる松のお湯 とんでとび去る神経痛」という看板を発見。神経痛に効果効能が期待できるようです。
間欠泉とは?木部谷温泉は珍しいメカニズム

間欠泉の近くに看板がいくつか設置されています。子どもたちが見学に来るのか、わかりやすい説明や温泉への興味を惹くような内容が多め。間欠泉について簡潔に説明しているものがあったので、ご紹介します。
間歇泉(=間欠泉)とは、一定の時間をおいて噴出する温泉です。この間歇泉は、約25分間休止した後、約5分間湧出します。噴出は炭酸ガスの圧力によるもので、全国の数少ない間歇泉の中でも極めて珍しいものです。
注目したいのは「炭酸ガスの圧力によるもの」という一節。
間欠泉が噴き出すメカニズムははっきりとわかっていませんが、地中の水蒸気の圧力によるものが主流だといわれていて、炭酸ガスによるものはたいへん珍しいです。木部谷温泉はいわば、「激レア中の激レア」です。
地中に空洞があって、熱い温泉が半分ほど入っている状況を想像してください。温泉は下から湧き続け、水蒸気が増えたり空気が熱されたりして空洞内部の気圧が高まります。ついに圧力に耐えられなくなって上に空いた小さな穴に出口を求めて温泉水が噴き出していく、という仕組みです。サイフォン式のコーヒーメーカーに似た仕組みだといえます。

出典:いらすとや
しかし木部谷温泉は源泉温度20℃ほどの冷たい温泉。熱も水蒸気ももっていません。木部谷温泉が湧き出す原動力は、炭酸ガスだとされています。空洞の中に増え続ける炭酸ガスで気圧が高まって、外に噴き出してくるというわけです。
そもそも炭酸ガスを多く含む温泉が少ないので、炭酸ガスで噴き上げる間欠泉は日本ではなかなか見られません。
間欠泉の仕組みが凄い!日本の間欠泉はどこで見れる?

赤茶色のお湯に感激!レトロな佇まいも良い

間欠泉から坂を降りて、駐車場に戻ってきました。その裏に一軒宿「松乃湯」があります。民家っぽい見た目が落ち着きます。

お湯は鮮やかなオレンジ色でした。細かなカルシウムの粒が浮かぶほどの濃厚さです。これはすごい!
温泉が赤茶色になるのは、温泉に含まれる鉄分が空気にふれて酸化するため。温泉分析書を見ると、鉄イオンの含有量が19.4mg/1kgと、「含鉄泉」の基準値20mgをわずかに下回っていました。惜しい! それでもここまで鉄分を含んでいる温泉は全国的に珍しいです。

お湯を舐めてみると苦しょっぱくかなりクセのある味わい。海水よりも濃くてエグ味があります*。
お風呂にはこんな掲示が。鉄分以外にも「成分の種類が多く、その濃度が高い」です。泉質は「ナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉」とある通り、塩分、カルシウム、重曹がたっぷり含まれています。
きりきず・冷え性・皮膚乾燥症などに効果効能があるように、肌にいい泉質です。濃い成分が肌の表面をコーティングしてくれるため、皮膚の乾燥や冷えなどから守ってくれます。
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鉄分と塩分のキシキシする手触りがくせになりそうです。成分が肌についているときはキシキシして感じますが、湯あがりからしばらく経つと肌がスベスベになっているから不思議なものです。ぬるめのお湯でじっくり浸かれました。
* 木部谷温泉の飲用許可はありません。飲泉は許可の出ているところで指示に従って行ってください。
お湯へのこだわり!温度調整も楽しい

湯船の左右に、温度調節のバルブがついています。右側は温度を上げるため、左側は下げるため。
右からは高温の水蒸気がお腹に響くゴゴーッという音とともに噴き出し、あっという間にお湯の温度を上げてくれます。僕はぬるめが好みなので、一度ひねって迫力を体感したところで終了。バルブ含めて全体が高温になっているので、タオルを手に巻いて慎重にひねりましょう。
左からは冷たい源泉水が出てきます。空気にふれて酸化する前の透明で新鮮な温泉水が出てくるので、入浴中は開きっぱなしにしていました。
どちらも、あくまでも調整用なので入浴後はバルブを閉めて出るようにしましょう。
ちなみに、湯船の外側をびっしりと覆う緑色の正体は藻です。温泉成分を好んで生息する藻もいて、お風呂が汚いわけではなく、温泉が自然の恵みである象徴だといえます。
まるで温泉の博物館! 木部谷温泉で自然の神秘を感じよう

温泉に入ったあとは、休憩室で温かいお茶をいただけます。

間欠泉に向かう坂の途中に、木部谷温泉の歴史を紹介する展示があります。

昔使われていた鉄風呂と、温泉に含まれる炭酸カルシウムが結晶化した「石灰華」が展示されていて、温泉の歴史に思いをはせることができます。

松乃湯は昭和63(1988)年開業の小さな旅館。それまでも温泉が湧き出していて地元の人たちが使っていたそうですが、間欠泉の源泉を掘り当てたのをきっかけに、誰もが利用できる旅館も建てたのだとか。
全体的に昭和感が満載で、平成生まれの僕にはレトロな感じがします。
○間歇泉が自噴する原因は何か
○噴き出した泉水が茶褐色に変わるのはなぜか
という2つの問いも、間欠泉見学や温泉入浴で答えが見つかりました。
温泉が噴き上げる様子を見てから入浴すると、成分をイメージしやすく、温泉のありがたみを実感できます。
炭酸ガスで噴き上げる激レアな間欠泉をもつ「木部谷温泉」。見て楽しく、入って気持ちいい温泉の博物館に、あなたも行ってみませんか。
「木部谷温泉 松乃湯」の詳細情報
施設名 | 木部谷温泉 松乃湯 |
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住所 | 島根県鹿足郡吉賀町柿木村木部谷529 |
電話番号 | 0856-79-2617 |
URL | town.yoshika.lg.jp/ |
営業時間 | 7時30分〜19時30分 |
定休日 | 毎月5, 6日・15, 16日・25, 26日 |
利用料金 | 日帰り大人450円(半日滞在700円)小人200円 宿泊は二食付7,900円 |
アクセス | 津和野駅から車で約30分、萩・石見空港から車で約50分 |
木部谷温泉 松乃湯の温泉情報
泉質 | ナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩泉 (低張性・中性・冷鉱泉) |
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泉温 | 20.5℃ |
湧出状況 | 自噴 |
加水 | なし |
加温 | あり |
消毒 | なし |
かけ流し | 完全かけ流し |
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