横浜温泉チャレンジャー2021年12月31日閉館│地元の人に愛された療養泉

横浜市内にある知る人ぞ知る名湯「横浜温泉チャレンジャー」が、2021年12月31日に閉館します。

福祉施設に併設された温泉は、地域の方がふだん使いするためのシンプルな作りで、療養のための貸切風呂もあります。

横浜温泉の最後の日々を取材してきました。

※特別に館内の撮影と記事掲載の許可をいただきました。

1,500mから汲み上げた源泉はアブラ臭がたまらない!

 

この投稿をInstagramで見る

 

ケビンマイラブ(@hiro_pon_001)がシェアした投稿

大浴場の扉を開けると、雨上がりの森のような爽やかなモール臭が鼻腔をくすぐり、湯舟につかりたい気持ちがはやります。

大きなポリ桶にザバザバかけ流される温泉のかけ湯でモール泉をフライング体験してから、正面の湯舟に身を沈めます。

やや熱めの42~43℃で、はじめはピリリと熱の刺激を感じますが、サラリとした澄んだお湯は身体をやさしく包み込み湯上りの肌触りはスベスベに。

富士山のペンキ絵を眺めながらつかっていると数分で額が汗ばんでくるので、原色で折り鶴のような鳥が描かれたステンドグラスの戸を開けて屋外へ。

関東平野を吹き渡る寒風に身をさらしてクールダウンし、しばらくしたらふたたび熱めの湯に戻ります。

寝湯は41℃くらいなので、のんびり温泉を楽しみたい方にはおすすめです。

*横浜温泉は飲泉できません。

緑のお湯が美しい!

特別に許可をいただき、貸切風呂を撮影しました。

近隣の温泉とは異なる泉質だと思ってお湯の色を見たくなり、お湯を張っている途中の貸切風呂を見学させてもらいました。

鮮やかな緑色をしているではありませんか。板橋区のさやの湯処も似た色ですが、モール系の香りは横浜温泉ならでは。

ここのお湯は地下1,500mからくみ上げた源泉温度46℃のお湯。一帯では珍しい高温泉です。関東平野に多い黒湯や黄金色の塩化物泉とは異なるお湯です。

泉質は塩化物泉で、殺菌に良いとされるメタホウ酸を多く含むことが特徴です。テイスティング*してみるとほんのり塩味がするほか甘みやまろ味が感じられて、優しさと力強さを併せ持ったお湯だとわかります。

貸切風呂も利用できて療養にもぴったり

さて、鮮やかなお湯が張られた「個別浴室」は、足腰に自信のない方や療養に専念したい方にもぴったりです。

「個別浴室」は段差が少なく手すりも充実しているため、足腰の不自由な方も入りやすいです。また、お湯の鮮度にこだわりたい方や、周囲の人目を気にせず温泉をじっくり楽しみたい方にとっても貸切風呂はありがたいのではないでしょうか。

なお、館内は全体的に段差が少なく、高齢の方も利用しやすくなっています

個別浴室は全部で4つあり、予約も可能です。この日も個別浴室には常連さんの予約が入っていました。

食事処&休憩スペースにはマンガがずらり

「多目的交流スペース」はフラットな床にテーブル席と畳の席があり、湯上がりの休憩を自由にできます。

食事処「一色亭」は11時30分オープン。生ビールなどの選べるドリンクとおつまみのセットが500円など、お手頃な価格も魅力です。

畳のコーナーの一角を占めるコミックコーナー。定番の作品がずらりと並び、ついつい手を伸ばしてしまいます。

畳のスペースの奥には、キッズコーナーもあります。ステージの上はマットが敷き詰められ、尖ったものなどがないので小さなお子さんと過ごすのも安心できそうです。

「チャレンジャー」の由来などベテランのスタッフに聞いてみた。

タオルなどの販売品がきれいに並ぶガラス棚

個別浴室の見学を快諾してくれた番台の方に、「このあたりでは珍しいお湯ですね。色も鮮やかでした」と伝えたところ、目を細めて「やっぱりここのお湯は特別なのよねぇ」と話し始めてくれました。

その方を仮にAさんとしましょう。途中からBさんも来て、横浜温泉のあれこれをお話ししました。

A:私は冷え性だったんだけど、ここに来て治ったのよね。ケガで休んだことはあるけど、病気で仕事を休んだことは一度もないわ。温泉に入りながら仕事ができるなんて、本当に天職よ。

B:みんな丈夫だよね。

A:私の仕事がなくなってしまうのはまだ仕方ないけど、このお湯に入れなくなってしまうことが悲しいわ。

B:アトピーの療養に来ている方もたくさんいるよね。温泉水の販売もやっていて、毎週タンク一杯に買っていくお客さんもいるわ。

A:アトピーが治ったっていうお客さんもたくさん見てきたよね。

橋本:ところで、ここはどうして「チャレンジャー」というんですか?

A:福祉法人が温泉を掘るのがチャレンジだったからよ。はじめは施設で使っていたんだけど、地元の人向けのお風呂も作ったの。

B:開業した時は本当にすごかったわ。1日に1,000人来る日もあってね。下駄箱が足りないから番号札を配って待ってもらって。今では多い日でも300人くらいかしら。

橋本:これだけ素晴らしいお湯があって、雰囲気も良いのに、閉館してしまうとはもったいないですね。家の近くにあったら毎週のように通いたいです。

A:そうでしょう。地域の温泉だから、施設を残して引き継いでくれる方がいるといいんだけど……。

番台に並んだサンタさん。季節ごとの置物が入浴客を和ませてくれる

お二人とも十数年にわたって横浜温泉で働き続けてきた大ベテラン。療養に訪れる方や地元の常連さんなど、たくさんのお客さんとの出会いがあったことでしょう。

きれいな建物でお客さんもたくさん来ていたので、12月末に閉館してしまうことがにわかには信じられませんでした。

横浜温泉チャレンジャーは2021年12月31日で閉館

横浜温泉チャレンジャーは、横浜市旭区で21年にわたって営業を続けてきましたが、コロナの影響などもあって残念ながら2021年末に閉館することになりました。

「地域交流施設」の名前の通り、地元に愛されてきた温泉です。閉館まであと11日。ぜひ訪れてみてください。

横浜温泉チャレンジャーの基本情報:アクセスや料金など

横浜温泉チャレンジャーは、長津田駅・十日市場駅・青葉台駅・三ツ境駅などからバスで十数分のところにあります。レトロな看板を目印に坂道を上がると「地域交流施設」と題した建物が見えてきます。

下駄箱の鍵がそのまま脱衣所ロッカーの鍵になる仕組みです。下駄箱には、「脱衣所では何段目になるか」が一つずつテプラで示されており、足腰に自信のない方の下駄箱・ロッカー選びにやさしいつくりです。

料金は大人800円・小人400円、個別浴室は追加で800円かかります。

「横浜温泉チャレンジャー」の詳細情報

施設名 「横浜温泉チャレンジャー」
住所 神奈川県横浜市旭区上川井町2287
電話番号 045-922-5590
営業時間 9時00分〜20時00分
定休日 毎月第3水曜日
利用料金 大人800円、小人400円
貸切800円別途
アクセス 十日市場駅・青葉台駅から路線バスで「消防出張所前」下車、長津田駅・三ツ境駅から路線バスで「若葉台南」下車。いずれも徒歩5分ほど
URL https://yokohamaonsen.web.fc2.com

横浜温泉のまわりは小川が流れる田園地帯。


団地と田園風景とが入り混じったのどかな地域です。

安全で楽しい温泉旅行を! 温泉施設の新型コロナウイルス対策ガイドライン

横浜温泉チャレンジャーでは、入館時の検温・消毒と、こまめな清掃、黙浴の推奨などの新型コロナウイルス感染症対策を行っています。

東京・神奈川のおすすめ温泉情報はこちら

横浜温泉の泉質「塩化物泉」についてもっと詳しく