温泉の魅力といえば、お湯の感触や雰囲気などいろいろありますが、温泉成分のおりなす美しい模様もまた心ひかれます。
特にカルシウム分の多い温泉だと、湯舟のへりに棚田のような析出物(せきしゅつぶつ)を作ることが多く、目でも楽しめるのです。
今回ご紹介する鳴子温泉の「村本旅館」もまさにそのひとつ。力強いお湯と、それを利用してきた人の営みとが合わさってできた芸術に感動しました。
もちろんお湯も最高でした!
目次
熱すぎて入れなくても目で見て楽しい!一番風呂は最高

平日の日帰り入浴受付をはじめてすぐにお邪魔したため、女湯は清掃中でした。許可を頂いて見学させてもらうと、湯舟の側面にびっしりとついた析出物にびっくり。
まるでウレタンスプレーを吹きつけたかのようなボコボコとした析出物がびっしりついています。上の方で析出物の層が剥がれているのからもわかるように、湯舟全体が数ミリの析出物で覆われています。
思わず感動して「すごい析出物ですね!入れるのが楽しみです!」とご主人に伝えると、「全部温泉の成分なんですよ。毎日ちゃんと掃除して、検査も定期的に受けています」と教えてくれました。

女湯の見学を済ませて、男湯へ。ご覧のとおり、とても掃除が行き届いていて心地よいです。
析出物や湯の華などは温泉成分なので、お湯の濃さや新鮮さを実感できる魅力のひとつ。
ある別の旅館の人から「析出物や湯の華を汚いと感じる人もいるので、しっかり説明する必要がある」と聞いたのを思い出し、「この魅力が訪れる人みんなに伝わってほしいなぁ……」と思いました。

というわけで、男湯へ。ご主人が「さっきお湯を入れたばかりなのでちょっと熱いかもしれませんよ」と教えてくれました。
手で温度を確かめてみると、いけなくもな・・・うーん、やっぱり厳しい・・・
というわけでしばらくお湯が冷めるのを待ちます。

シャワーブースにはシャンプーがたくさんあります。

左側のお湯の流れ出る溝と、右側の湯舟のへりとで、色合いや形がぜんぜん違うのがおわかりいただけると思います。
畦石(あぜいし;リムストーン)
田んぼのあぜの形状に似た鍾乳石で、床をゆるやかに流れる水が作る。
その形状は、段段畑に似ている。
鍾乳洞にできるものと、作られた理由は似ているはず。ゆるやかに流れるお湯が長い年月をかけて形作ったのでしょう。
石灰華ができやすい泉質としてはカルシウムー炭酸水素塩泉があるが、それだけでなく塩化物泉もあげられる(中略)。このような温泉が地上に湧出してくると、炭酸ガスの圧力が下がり、溶けきれなくなった炭酸カルシウムが沈殿となって析出する。(田上,2003:4)
出典:田上貴史,2003,「阿蘇長陽村栃木における石灰華」,『熊本地学会誌』134:2-11.
ここの泉質はまさに、「ナトリウム・ カルシウムー硫酸塩・炭酸水素塩泉」。ビンゴです!
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いざ入浴!シビれる熱さの先に心地よさが…

ほんのちょっとだけ水を足していざ入浴。入念にかけ湯をして体を慣らし、そーっと湯舟に入ります。
水面を間近で見ると、カルシウム分の細かな結晶が湯面にふわふわと漂っているのに気づきました。それだけ成分が濃いのです。
カルシウム分が多いお湯につかると、僕はすぐ汗だくになってしまうのですが、このお湯もまさにそのとおり。1分くらいで額から汗がにじみます。キュッキュッとした手触りのお湯はベタつかず、慌てて湯舟をあがると肌はサラサラした感じがしました。
せっかくなのでもう少し入りたいと思い、水シャワーでクールダウンしてから再度湯舟へ。やっぱり熱いですが、慣れたおかげかさっきよりも身体に馴染む感じがします。しびれるような熱さの奥に気持ちよさが感じられ、身体の内側から暖まるような感覚がします。
でもやっぱり熱くて、再び2分程度であがることに。最後にお湯をテイスティング*してみると、まさに硬水のような硬さを感じました。カルシウムの味をはっきりと感じられたのははじめてで、嬉しくなりました。
* この温泉は飲用できません。
鳴子温泉の「川向こう」の名湯を味わおう!

ザバザバとかけ湯したせいで湯小屋の中はすっかり湯気で満たされてしまいましたが、脱衣所に戻ると夏の東北の爽やかな風が吹き込んできて全身を包み込んでくれました。
お湯につかっている時間も大好きですが、こうしてお風呂上がりに無心に風を浴びる時間もまた心地よいものです。
汗が引くまでぼーっと立っていると、ご主人が冷たい飲み物を差し入れてくれました。粋な計らいに感謝して一気に飲み干し、名湯をあとにしました。

アットホームな佇まいですが、とてもきれいに保たれていて気持ちよかったです。

こちらが旅館の建物。お風呂は別の建物にあります。
村本旅館は、鳴子温泉駅がある温泉街から江合川を隔てたところにあります。
鳴子温泉駅からは徒歩13分ほどで、硫黄泉の多い鳴子温泉街とはまた違ったお湯を楽しめます。

川面を吹き渡る風を感じながら、鳴子の温泉街までのんびり歩いて戻りました。もちろんタオルは首にかけて。
「村本旅館」の詳細情報
施設名 | 「村本旅館」 |
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住所 | 宮城県大崎市鳴子温泉末沢西17-3 [Map] |
電話番号 | 0229-83-4055 |
日帰り 営業時間 |
10時00分~14時00分 |
料金 | 日帰り:500円 宿泊:要問合せ |
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