ホテルおおるりグループの「那須高雄温泉 おおるり山荘」は、2021年8月30日に閉館しました。
ぬるめの硫黄泉を源泉かけ流しで楽しめる露天風呂は、雲海や星空、朝焼けなどの絶景も魅力。
リーズナブルな価格で、温泉好きはもちろん家族連れや夫婦などに広く愛された宿の、最後の日をご紹介します。
目次
なんといっても露天風呂!ぬる湯の硫黄泉源泉かけ流し&絶景

※温泉の写真はすべて、他のお客様がいないときに撮影しました。
那須高雄温泉 おおるり山荘の最大の魅力は、なんといっても露天風呂。
標高1,058mと那須湯元よりも高い山の中腹にあり、晴れた日には那須野が原や山々の稜線を一望できます。
この日は星空や朝焼けを眺めながら贅沢な時間を過ごしました。

はるか遠くを漂う雲や飛行機をぼんやり眺めていると、自分がちっぽけな存在に思えてきます。

※宿に着いたタイミングでデジカメが故障してしまったため、スマホで撮影した画像が続きます。
湯舟から見るとこんな感じの景色です。空と一体になったような感覚すら覚えます。
浴槽が深すぎないおかげで、楽な体勢で長風呂できます。
絶景をじっくり楽しめるのは、38℃というぬるめの源泉温度のおかげ。露天風呂では加温せずに源泉をそのまま注いでいます。
山の中で入る硫黄泉といえば、ビリビリするような熱さと刺激が特徴のところが多いですが、ここは違います。

pH6.1とほぼ中性で金属も少ないため、苦酸っぱいエグみはまったくありません。
ふわふわと漂う湯の華が、硫黄の濃さを物語っています。お湯にもしっかりと硫黄(硫化水素)が溶けています。
ピリピリせず、かすかにツルキシ感のある手ざわりはやさしく、1~2時間は平気で入っていられます。

湯舟には屋根はありませんが、脱衣スペースには屋根がついています。
手作り感満載の木造りの壁や棚が旅情をそそります。

女湯は男湯の奥にあり、鳥居があります。
源泉は古くから「行者の湯」として修験者に利用されてきたそうで、神秘的な力が古くから知られていたかもしれません。

廊下には、かつての那須高雄温泉の写真がありました。
スタッフの方によると、ホテルおおるりグループがこの宿のオーナーになったのは20年ほど前のことだそう。それ以前の様子なのでしょう。
貸切露天風呂はあったかくて最高
1泊4,000円~(通常プラン・素泊)という格安料金でありながら、1組2回まで無料で貸切露天風呂を利用できるのも「那須高雄温泉 おおるり山荘」の魅力でした。
露天風呂は「左京の湯」「中京の湯」「右京の湯」の3種類。12時から22時まで、入替時間を含めて50分交代で枠が用意されています。

この日の温度は、左京40℃、中京41℃、右京42℃。貸切露天風呂は加温されており、寒い日でもあったかいお湯につかれます。

せっかく40分も独占できるので、一番ぬるい左京の湯をチョイス。時間になったらフロントで鍵を受け取ります。
硫黄で真っ黒に錆びた南京錠を開けて、いざ入浴!

青みがかった温泉と空を独り占めできるのはたまりません!
男湯側の露天風呂でしたが、仕切りがしっかりあるので安心でした。
湯口から注がれるお湯は45℃くらいに加温されていました。うっかり直接ふれないよう、筒を通して湯舟に注がれます。
20分もつかっていると、いつの間にか汗がじんわりと出てきて、身体の内側からポカポカと暖まってきます。
男女別の露天風呂にいたときはぬるくて気づきませんでしたが、なかなか力強いお湯です(チェックアウト後も1日中身体がポカポカしていました)。
内風呂は広くて快適

露天風呂へと続く廊下の途中に、男女別の内風呂があります。

こちらも加温されており、42℃くらいになっています。湯量は十分で、端っこでも十分暖かく、お湯がしっかりかけ流されているのがすぐわかります。
屋内の上に加温されているため、悪天候の日や寒い日でも温泉を満喫できます。こちらにも露天風呂がありますが、訪れたときは閉鎖されていました。
シャンプーとボディソープがあって身体が洗えます。ドライヤーはフロントで借りられます。

脱衣所は広々としており、密を感じることはありませんでした。
最後は素泊まり専門に。バイキングも人気だった

手書きの味わい深い看板の隣に「宴会場」とあります。最後は素泊まり専門になってしまったため使われませんでしたが、ホテルおおるりグループは、基本的に朝夕とも食べ飲み放題のバイキングです。

広々とした宴会場は、往時の賑わいがしのばれます。
ホテルおおるりグループは2021年8月末に、那須高雄温泉を含む8館を一斉閉館することになりました(草津と塩原は営業を続けています)。
コロナの影響とのことで、あらためてこの災禍の重さを痛感します。

カラオケルームは卓球場になっていました。少しずつ温泉旅行の形も変わっていくかもしれません。
ベッドで快適!窓際の“あのスペース”もある広い客室

さて、お部屋に戻ります。客室はリニューアルされており、ウォシュレット付きのトイレや広い洗面台もあります。
エレベーターが2か所にあり、客室内の段差もほとんどないため、足腰に自信のないお年寄りの方も安心して利用できます。
ベッドと、座布団&ちゃぶ台の和洋折衷の客室は、足腰への負担と快適性や旅情を両立しています。

窓際には温泉旅館におなじみの「あのスペース」も。晴れた日には、露天風呂と同じような景色を楽しめます。
テーブルが大きめなので、床に座りづらい方はこちらで寛ぐことができます。

タオルはホテルおおるりグループ共通のもの。「泉質にこだわって40余年 温泉に自信あり!」とのフレーズが心地よい安心感を与えてくれます。

浴衣はフロントで選ぶスタイル。体格や柄の好みに合わせて男女関係なく選べるのはとてもうれしいです。

フロントの横に電子レンジとラップが置かれていました。すぐ近くにトースターとアルミホイルもありました。
素泊まり専門な上に、湯元の温泉街から離れていますが、電子レンジとトースターがあれば持ち込んだ食べ物をおいしくいただけます。
客室には電気ポットと冷蔵庫があります。
素泊まりでも楽しい!持ち帰りグルメ

しばらく那須高雄温泉 おおるり山荘の話から脱線しますが、せっかくの素泊まりということで持ち帰りグルメを紹介します(興味のない方は飛ばしてください)。
ホテルおおるりグループでは、2021年3月から栃木駅・小山駅と各旅館を結ぶ無料送迎バスを運行しています。
というわけで、まずは今回バスを利用した栃木駅前の名物から。
栃木駅前の「武平作だんご」は、もちもちの団子が人気の名店です。お団子は1串100円~(税抜)とお手頃で、粒あん・こしあん、みたらしのほか、うぐいす餡やごまなどが定番。
今回は季節限定の栗餡を選びました。ほど良い甘さの餡がたっぷりのったお団子をほおばると、お団子のツルリ、もっちりとした食感と餡のもったりしすぎない食感、栗のつぶつぶ感が相まって幸せになれました。

夕食は、ブラジル料理と日本料理のそろい踏み。
ブラジル人が多い群馬県大泉町のスーパーで買ったブラジル料理は、牛肉のグリルと、干し鱈のコロッケ。
埼玉県加須市の道の駅「かぞわたらせ」で買った「鯉のあらい」は、栃木県の地酒「天鷹」とともにいただきました。
お店ではなかなか体験できない組み合わせを楽しめるのも、持ち帰りグルメの良いところかもしれません。
ちなみに翌朝は、食べすぎの影響でお腹が空かず朝食をスキップしました。この柔軟さも素泊まりの醍醐味です。
翌朝は宿の周辺を散策。高原の空気がすがすがしい!

翌朝は早起きし、朝焼けをじっくり満喫してから宿のまわりを散策してみました。
この手前側に、2020年に新設されたオートキャンプ場があります。車で訪れてキャンプや車中泊ができるので、ペットがいる方や密を避けたい方にはぴったりでした。

露天風呂の下に来てみると、「行者の湯」という足湯がありました。たくさんのお風呂に源泉かけ流しで使ってもなお湯量に余裕があるとは、源泉の豊富さを実感します。
湧出量は1分に1,000Lもあるそうで、1軒の宿で使われているとはなんとも贅沢な話です。

宿に戻り、ロビーで一休み。真っ赤な革張りのソファーにシャンデリアと、昭和レトロな雰囲気がたまりません。

自動販売機とマンガコーナーがありました。ふくろうの剥製はちょっと窮屈そう。

フロントには、閉館を知らせる張り紙が。コロナ禍で素敵なお宿をまた一軒失う寂しさを、あらためて胸に刻みます。
おおるり山荘の一軒しかない那須高雄温泉に、いつかまた入れる日が来ることを願ってやみません。
いよいよ最後のお別れ

チェックアウト時間は9時30分ですが、送迎バスを利用するため出発は9時です。
スタッフの方々がフロントに集まり、最後の別れを惜しむ常連さんとあいさつを交わしたり、片づけの手順を確認したりしていました。

マイクロバスに乗り込み、途中の道の駅で、塩原温泉からのバスに乗り換えます。
塩原温泉のホテルおおるりはこれからも営業を続けます。運転手さん同士でどんな挨拶を交わしたのだろうか、などと窓の外をぼんやりと眺めながら考えます。
バスは高速道路に乗ってあっという間に栃木駅へ。道の駅まで1時間弱、そこから栃木駅は1時間ちょうどでした。硫黄のにおいがしみ込んだタオルを握り、別れを惜しみます。
運転手さんに「ありがとうございました!」と精一杯の感謝の気持ちを伝え、帰宅の途につきました。
那須高雄温泉 おおるり山荘の基本情報【2021年8月閉館】

那須高雄温泉 おおるり山荘は2021年8月30日に閉館してしまいましたが、基本情報をお伝えします。
「那須高雄温泉 おおるり山荘」の詳細情報
施設名 | 那須高雄温泉 おおるり山荘 |
---|---|
住所 | 栃木県那須郡那須町湯本212-486 |
電話番号 | 0120-368-001(おおるりグループ総合予約センター) |
日帰り入浴 営業時間 |
14時00分〜19時00分 |
定休日 | 不定休 |
利用料金 | 日帰り入浴:1人500円(税込) 宿泊:素泊1人1泊4,000円~(税別) |
アクセス | 東北自動車道「那須IC」から車で約25分 宿泊者は栃木駅・小山駅と、那須湯元バスターミナルの無料送迎あり(要予約) |
URL | https://www.ohruri.com/hotel/nasu_ohrurisansou |
あらためて、およそ20年もの間、素敵な場所を提供してくれたホテルおおるりグループに感謝します。
塩原温泉と草津温泉の「ホテルおおるり」はこれからも営業を続けるので、ぜひ訪れてみてください。
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