最北の湯治場、豊富温泉。原油をたっぷりと含んだ唯一無二のお湯を求めて、全国から多くの人がアトピーや乾癬の療養に訪れます。
自然の素材をふんだんに使ってリニューアルし、若い湯治客にも支持を集めている「川島旅館」を訪ねました。
自家製のバターフィールドやプリンなども味わえて大満足。もっと長く過ごしたいと思いました。
目次
ぬくもりのあるおしゃれな空間にワクワク

札幌から日本海沿いのオロロンラインを走ること6時間、徐々に気温が下がっていくのを感じながら豊富温泉に着く頃には、13℃になっていました。風を感じながら川島旅館へ向かいます。

暖炉のある共用ラウンジには、本もたくさん。

木をふんだんに使った開放感のある空間は、静かでモダンな一方でぬくもりを感じます。早速長旅の疲れが癒やされました。
素朴なシングルルームで長期滞在も快適そう

シンプルで機能的な客室。シングルルームが多いのも特徴。
案内されたのはシングルルーム。ベッドとデスクがあるシンプルで機能的でお部屋です。
道産トドマツのフローリングなど自然の素材を活かした内装で、シンプルながら落ち着く空間となっています。

ハンガーラック、枕元のテーブル・コンセント、湯めぐりバッグと、かゆいところに手が届くしつらえが嬉しいです。
浴衣はジェンダーフリーでサイズを選ぶしくみ。サイズごとに何種類か柄があり、何が出るかはお楽しみです。
豊富牛乳&梅干しのウェルカムサービス

川島旅館では、「元気になる」ことをコンセプトにしています。ウェルカムドリンクの豊富牛乳で元気をもらいました。
東京や札幌から遠く、移動で疲れる人も多いだろうとのことで、クエン酸をたっぷり含んだお目星がお茶請けです。
和歌山県の専門店から取り寄せた品で、デザートのように甘いので牛乳とも合っています。梅干しがあまり得意ではない僕も美味しい! と感じました。
早速お風呂へ!唯一無二な石油の温泉は源泉かけ流し

浴衣に着替えてお風呂へ。2つのお風呂が日替わりで男女入れ替えになっており、僕が着いた日の男湯はこちらでした。

灰黄色に濁ったお湯からは、灯油のような、漢方薬のような、独特の爽やかな香りがします。
石油だけではないような、不思議なお湯です。

石油を掘削しているときに偶然湧き出した豊富温泉。現在でも天然ガスの採掘が行われている上に、お風呂には原油の油膜が張ることもあるのだそう。
地元の人は油膜を肌のトラブルに使ってきたそうで、現在でも「豊富町ふれあいセンター」のお風呂には肌に塗る用の原油がおかれています。
※利用は体調に応じて温泉療法医のアドバイスなども受けて行ってください。

お風呂は、源泉そのままの33℃くらいのぬる湯と、加温した40℃くらいのあつ湯、そして露天風呂の3つがあります。
長湯できるように加温はしすぎず、源泉のぬる湯と交互浴ができるようになっています。夏だったのでぬる湯が気持ちよく、新鮮なお湯の香りやとろりと肌を包み込む感覚を30分くらいかけてじっくりと満喫しました。
夏といっても気温は20℃くらいで、涼しい風が吹きわたっています。露天風呂で再び身体を暖めてから風に当たれば、ものの1分くらいで全身が乾いてバスタオルいらず。温泉成分を拭き取らず、肌にしっかりと浸透させましょう。
※塩分を含む温泉のため、敏感肌の方は入浴後に真水のシャワーを浴びることをおすすめします。

脱衣所の鏡は、リニューアル前のものを受け継いでいます。水道水はしっかり冷えていて美味しく、安心して飲めます。
長風呂のあとはしっかり水分補給を行いましょう。
手作りにこだわった食事は元気になる味!

部屋に戻ってのんびりしていると、いつの間にかご飯の時間。長風呂のおかげか、バッチリお腹が空いています。
フロントの奥にあるダイニングに向かいます。

ワンドリンクサービスでビールを頂きました。サラダはしっかりボリュームがあり、これだけでもビールが進むほど。自家製ドレッシングは丁度いい味つけで、野菜の味を引き立てます。

牛乳茶碗蒸しは、鮭節とバターの餡がかかっています。
ダシの香りとバターのコクが、まろやか・なめらかな茶碗蒸しと相性バツグンです。

ビールが空いて(もう1杯飲もうか、どうしようか)と考えていると、「ご飯をお持ちしましょうか?」と声をかけていただいたのでお願いすることに。
この日は札幌から1人で運転して疲れていたので無理は禁物。常連さんから「ここはご飯が美味しいよ!」と言われていたのでご飯をしっかりと味わおうと思います。
鮭ときのこのクリーム煮は鮭の旨味がしっかりと感じられて箸が止まりませんでした。
ご飯は粒が立っていながらももちもちとしていて、こんなに美味い白飯はいつぶりだろう……と感激。
えび団子のおつゆは、海老の食感が残っていていいダシが出ています。

最後は豚のロースト。脂に甘みがあってご飯とよく合います。久々にご飯のおかわりをして、すっかりお腹いっぱいになったところでデザートがやってきました。

ミルクティープリンは、「えっ、これがプリンなの?」と思うほどもっちりぷるぷるの絶妙な食感です。
豊富牛乳を使った手作りのスイーツも、川島旅館の名物です。すっかり大満足でダイニングを後にしました。
朝は旅館のまわりをお散歩

夜はばっちり眠って、太陽の光で目が醒めました。部屋の窓からは中庭が見え、サロベツ原野を吹き抜けてきた爽やかな風も入ってきます。

朝日にいざなわれて外に出てみると、快適そうなテーブルがありました。ここでテレワークしたらいいアイデアが湧いてきそうです。

手作りのブランコもあって、童心にかえった気分です。

駐車場からのアプローチも素敵で、ここを通る間にさっそく気分がリフレッシュしそうです。
自家製バター&パンの朝食に大満足

朝ごはんは、ご飯とパン両方出てきます。どちらかだけにもできますが、昨日食べたご飯が美味しかったので朝も頂くことに。

もっちりふわふわとしたパンに、豊富牛乳を使った自家製バターフィールドを塗っていただきます。
この日はハスカップ、ハチミツ、うに、鮭節の4種類のフレーバー。「コクがありながら軽やか」と説明に書いてあり、まさにそのとおりです。

パンとバターが合うのは言うまでもありませんが、ご飯とも合うのです。
北海道ではポピュラーな「バター醤油ご飯」がプレミアムになったような味わいです。うにとバターのもったりした旨味を醤油が引き立て、あつあつのご飯に絡むと最高の味わい。

パンもご飯もおかわりしてしまう、最高の朝食でした。
朝風呂は昨日と違うお風呂で

男女が入れ替わって、昨日とは別のお風呂に入れます。ふたたびぬるい源泉でじんわりと身体をほぐします。

ふたたび露天風呂で風を浴びてクールダウンしました。
女将にインタビュー:アフターコロナの温泉旅行を考える
アフターコロナの温泉文化を考える①「1人の人間としての関係を」川島旅館3代目女将・松本美穂さん(北海道 豊富温泉)

旅行・観光のあり方が大きく問い直されています。従来の旅館のイメージを覆すリノベーションを行い、全国から若い湯治客が訪れている「豊富温泉 川島旅館」の女将は、アフターコロナの温泉旅行をどのように構想しているのでしょうか。
「豊富温泉 川島旅館」の詳細情報
施設名 | 「豊富温泉 川島旅館」 |
---|---|
住所 | 北海道天塩郡豊富町字温泉 |
電話番号 | 0162-82-1248 |
営業時間 | 日帰り入浴:10時30分~22時00分 カフェ:11時~14時(持ち帰りのみ) |
利用料金 | 1泊2食付き9,350円~(ビジネスプラン) 日帰り入浴:大人800円、小人400円 |
アクセス | JR豊富駅から沿岸バスで約10分「ふれあいセンター」下車すぐ 高速道路経由で、札幌市内から車で約4時間半、旭川市内から約3時間半 |
URL | http://kawashimaryokan.co.jp/ |
※現在日帰り入浴の受付を中止しています。
見応えバツグン!豊富温泉周辺の無料観光スポット

豊富温泉の周辺には、「サロベツ湿原センター」と「幌延深地層研究センター」の2つの無料で見学できる施設があります。
いずれも調査研究の拠点にもなっており、現地でしか得られない学びがあります。両方行ってきたのでご紹介します。
原野の向こうに利尻富士「サロベツ湿原センター」

「サロベツ湿原センター」は、サロベツ原野のビジターセンター。一帯は「利尻礼文サロベツ国立公園」に指定されており、手つかずの自然が残されています。

全長1kmあまりの木道を歩けば、四季折々の湿原に咲く原生植物の花を見られます。晴れた日には利尻富士も望む絶景スポットです。
豊富温泉からは12kmほど。車があれば15分で行けるほか、レンタサイクルでも快適にアクセスできます。

北海道に多い「モール泉」を作っている泥炭が見られました。地中に残された植物性の成分が、コーヒーのような褐色のお湯を作ります。
「サロベツ湿原センター」の詳細情報
施設名 | 「サロベツ湿原センター」 |
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住所 | 北海道天塩郡豊富町上サロベツ8662 |
電話番号 | 0162-82-3232 |
営業時間 | 5月~10月:9時~17時 ※6〜7月:8時半〜17時半 11〜4月:10時~16時(月曜休館:祝日の場合は) |
休館日 | 5月~10月:無休 11〜4月:月曜日(祝日の場合は火曜に振替)、年末年始 |
利用料金 | 無料 |
アクセス | JR豊富駅から沿岸バスで約10分「サロベツ湿原センター前」下車すぐ 高速道路経由で、札幌市内から車で約4時間半、旭川市内から約3時間半 |
URL | http://sarobetsu.or.jp/swc/ |
「幌延深地層研究センター ゆめ地創館」

「幌延深地層研究センター ゆめ地創館」は、放射性廃棄物の深地層処理を研究するための国の施設です。ここで廃棄をおこなっているわけではなく、地層の奥深くがどうなっているかの研究を行っています。

タワーのてっぺんからは研究施設も見えます。

隣接するトナカイ牧場も見えました。
「ゆめ地創館」は地層のことや放射性廃棄物のことなどをわかりやすく展示しており、月に1度見学会も行っています。すべて無料で見応えがあるので、ぜひ訪れてみてください。
こちらも豊富温泉からは車で15分くらいです。
「幌延深地層研究センター ゆめ地創館」の詳細情報
施設名 | 「幌延深地層研究センター ゆめ地創館」 |
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住所 | 北海道天塩郡幌延町字北進432-2 |
電話番号 | 01632-5-2772 |
営業時間 | 9時00分~16時00分 |
休館日 | 月曜日(祝日の場合は振替)、年末年始 |
利用料金 | 無料 |
研究施設見学 | 6~10月:火・木曜日(7~10月は第4日曜日も) 11~3月: 木曜日 |
アクセス | JR幌延駅から沿岸バスで約10分「深地層研究センター」下車すぐ 高速道路経由で、札幌市内から車で約4時間半、旭川市内から約3時間半 |
URL | https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/yumechisoukan/ |