飲んで飲んで飲みまくる!チェコの温泉「カルロヴィ・ヴァリ」で飲泉&「時間湯」体験

チェコの温泉地「カルロヴィ・ヴァリ(カールスバード)」は、パステルカラーに彩られた美しい町並みの中に12もの飲泉場が点在する飲泉の聖地。

変わった形の飲泉専用カップや「時間湯」に似た入浴法などの独自の温泉文化には、日本で年間100湯以上入っている僕もびっくりしました。

カルロヴィヴァリの温泉文化をたっぷりとご紹介します!

まずは飲泉カップを手に入れよう!

カルロヴィ・ヴァリといえば飲泉。神聖ローマ帝国の時代からこんこんと湧き続けるお湯を飲んで、身体の内側からエネルギーをチャージしましょう。

カルロヴィ・ヴァリのマストアイテムが、独特な飲泉カップ。マグカップの持ち手の部分が細いストロー状になっていて、そこから吸うと口に入る頃には温泉水がほどよく冷めているというしかけです。

川に沿ってお土産屋さんが立ち並んでいるので、早速お気に入りのカップを選びます。相場は200コルナ(≒1,200円)。

オーソドックスな形のものから、猫をかたどったものまで、様々な種類があります。

僕はヨーロッパの磁気らしい白地に青のものを選びました。お値段は190コルナで、ユーロ払いもできるとのことで8.9ユーロ(≒1,100円)を払いました。

濃厚な温泉水に衝撃!これは胃腸に利きそう……

カルロヴィ・ヴァリには12ヶ所の飲泉場(kolonáda: コロナーダ)が点在。早速お土産屋さんの近くでお湯を汲んでみました。

飲泉場にはカルシウムの析出物がびっしりついていて、思わずテンションが上がります。

淡い茶褐色のお湯は、見た目通り鉄分んでいて、塩味もきいています。源泉温度は50℃以上あり、ストロー状の柄を通して飲む独特なカップのおかげでヤケドこそしないものの、やっぱり熱いです。慎重に飲むと口いっぱいに苦しょっぱさが広がりました

日本の鉄分を含む温泉といえば、有馬温泉。カルロヴィ・ヴァリのお湯は、有馬温泉よりはだいぶ薄いですが、それでもたくさんは飲めない味です。金気臭のする、濃すぎない塩化物泉の味です。

9源泉を飲み比べ!推しは5番

カルロヴィ・ヴァリは、川に沿って2kmほど続く街に12のコロナーダが点在しており、そのうち10ほどが中心部に集まっています。今回は、中心部の9源泉を飲み比べました。

コロナーダは歴史を感じさせる重厚な建物の中にあり、建物を眺めるだけで「湯めぐり」を満喫できます。

コロナーダには番号がついています。先ほど飲泉したのは11番。

観光案内所で、コロナーダの場所や観光スポットなどが細かく描かれた地図が配られています。英語を話すスタッフもいるので気軽に質問できます。

地図と飲泉カップをもって、どんどん飲み比べていきました。写真とともにご紹介します。

柱廊が美しい!ローマ風のMlýnská Kolonáda(10~6番)

コロナーダの番号は、温泉街の奥から順につけられています。バスターミナルは手前側にあるため、飲泉めぐりは番号をさかのぼる形になります。

10~6番のコロナーダは、ギリシャの神殿を彷彿とさせる建物の中にあります。

大理石の柱も天井の彫刻も美しい! こんな建物に無料で入れるとはありがたい限りです。

10番。カルシウムの析出物が平らについているので、成分の微妙な違いを感じます。

9番。湯量がやや多く、析出物も多め。若干塩味も濃い気がしました。

8番。湯口が「ひねりがきいた」形をしていますが、味の違いがわからなくなってきました……

7番。やっぱり塩と鉄の味です。

6番。ややまろやかな印象を受けました。

重厚なのにかわいい!北欧風のTržní Kolonáda(5・3・2番)

教会かお城のような豪華な装飾に、思わず湯めぐりの足が止まりました。

パステルカラーの建物に装飾された細い柱が特徴のこちらの建物には、5番・3番・2番のコロナーダがあります。

5番があるのは、パステルピンクに彩られたスペース。

「むむっ、これは……!」ひときわ強い鉄の味。今までとは明らかに違う味がします。

濃い温泉が好きな僕にとっては、5番が推し源泉で決まり。

せっかく一番好きな源泉が決まっても、全部で1Lくらい飲んでいるのでおかわりをしようとは思いませんでした。

3番は、これまでの「直置き型」と違って壁にかかっています。

湯量も少なく、味も控えめな感じ。飲みやすいタイプです。

最後に訪れた2番は、彫刻の下にあります。

64℃とやや高温。飲泉カップを通しても熱かったです。

温泉療養は胃腸にいい

カルロヴィ・ヴァリのパンフレットによると、温泉療養は「消化システムの不調・代謝の不調・運動器官の不調」に良いと書いてあります。

日本の泉質分類にあてはめると、カルロヴィ・ヴァリの泉質はおそらく塩化物泉。塩化物泉の飲用適応症にも、「萎縮性胃炎」「便秘」があります。

「塩化物泉」の効果効能

泉質名 塩化物泉
浴用適応症 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用適応症 萎縮性胃炎、便秘

塩化物泉についてもっと詳しく

 

また日本では、すべての泉質にあてはまる「浴用の一般適応症」のなかで、慢性的な関節痛や胃腸機能の低下などがあげられています。

伝統的なヨーロッパの温泉文化でも、現代の日本の温泉科学でも、同じ答えが導き出されたと思うと感慨深いです。

そんなことを考えていたら、温泉のお風呂に入りたくなってきました……

「エリザベス・スパ」でカルロヴィ・ヴァリ流「時間湯」を体験!

せっかくだからお風呂に入らなければ! ということで、浴場(lázně: ラズニェ)へ。

訪れたのは温泉街の手前側、バスターミナルから徒歩10分ほどのところにある「Alžbětiny lázné(エリザベスのスパ)」。

SPA Ⅴは貸切の浴室が78室設けられています。受付でお風呂のタイプと時間を選び、予約します。受付の上にはお風呂の案内がびっしり並んでいます。

11時半に訪れたところ、最速で案内できる12時半に入れるのは4種類とのことで一番安い「Pearl Bath」を選びました。安いといっても398コルナ(≒2,000円)。日本の高級な温泉旅館にある貸切風呂と同じくらいの値段でしょうか。

「12時30分」「54番浴室」のところにマルをつけてくれました。

「10分前に浴室の前にいてください」と言われ、チケットを受け取りました。お昼ごはんを食べて時間をつぶし、言われたとおり12時20分に浴室へ。

すると看護服を着たおばちゃんが隣の浴室から出てきて「こっちに入れるわ」と案内してくれました。54番を予約していましたが、56番へ。

一般的な家庭の浴室の3倍くらいはありそうな広い部屋に、脱衣かご、ベッド、湯舟が配置されています。チケットを見せると、おばちゃんが手際よくお湯を溜めはじめました。

Take off everything!(全部脱いで!)”

そう言われて恥ずかしさをおさえながら服を脱ぎ終える頃には、湯舟の8分目までお湯が溜まっていました。おばちゃんが湯舟にチューブを入れると、湯面全体からゴボゴボと泡が浮かびました。

一人ずつお湯を捨てるため、かけ湯はなし。「こっちが頭で、あっちが足ね」と言われ、おそるおそる湯舟へ。

おばちゃんにカメラを渡して撮ってもらいました。

いきなり入っても熱く感じない、37℃ほどのぬる湯です。おばちゃんはタイマーをセットして、「20分たったらアラームが鳴るから、そしたら知らせてちょうだい」と言い残し浴室の外へ。天井から糸が垂れていて、これを引くとおばちゃんに連絡がいくようです。

 

全身を大粒の泡が包み込むおかげか、15分ほどで身体の中からポカポカしてきました。ふだん長風呂は苦手な僕でも、気持ちよく20分過ごせました。

アラームが鳴ったのでおばちゃんを呼ぶとすぐに来て、きれいに洗われたシーツを渡してくれました。これで身体を拭いてそのまま休むようです。

撮影を頼みそびれたので、使い終わったシーツで再現

ベッドを指さされ、そのままダイブ。洗いたてのパリッとしたシーツと、お風呂上がりの濡れた身体との組み合わせはとても新鮮です。

おばちゃんが毛布をかけてくれて、「10分したらアラームが鳴るから、今度は自分で出てね。これで終わり。」と言って再び外へ。

お風呂上がりの一休みです。

炭酸泉に入ったあとのように皮膚がパチパチとするような暖かさに包まれながら、気づけば眠っていました。10分でシャッキリ目覚めて合計30分の温泉体験はおしまい。

時間を測って入浴するところは草津温泉の時間湯に似ていますが、ぬる湯にじっくり浸かるのと休憩も時間を測るのがカルロヴィ・ヴァリ流。日本のお風呂の入り方とは異なる、新しい温泉の楽しみ方を知りました。

お風呂上がりに名物の巨大ゴーフレット:お土産にもぴったり

カルロヴィ・ヴァリの名物となっているお菓子「Karlovarské oplatky(カルロヴィ・ヴァリのワッフル)」。巨大なゴーフレットのような見た目で、有馬温泉の炭酸せんべいも彷彿とさせます。入浴して小腹がすいていたところ、ちょうど風格を感じるお店があったので入りました。

お店の中で伝統的な焼き型を使い1枚ずつ手焼きしていますが、店内は撮影禁止のため完成品だけご紹介します。

Karlovarské oplatky は味が10種類ほどあり、目移りしてしまいます。さんざん迷ってチョコレート味を選び、ホットワインを一緒にいただきました。

2枚の生地でクリームを挟んでおり、とても薄いのにしっかりとチョコレートの味がします。大味ではなく繊細な味と食感で感激

ホットワインはアルコールが少し飛んでいて、シナモンやクローブの爽やかな甘い香りと相まってとても飲みやすかったです。

店内ではお土産用の5枚パックも売られていて、お土産にもぴったりです。

熱気を感じる温泉の噴水!最後まで温泉街を満喫

テプラー川に沿って広がる温泉街の中心部には温泉が吹きあがる噴水があります。

10mは吹き上げていて、あたりにお湯のしぶきを飛ばしていました。後ろの建物と比べると高さが実感しやすいと思います。

その裏手で、廃湯が川に流れ込んでいました。温泉の温度や成分を好む藻が繁殖していて、温泉が自然のものであることを実感します。カルシウムの析出物もびっしり広がっています。

温泉の力を感じる光景にもグッと惹かれました。

姉妹都市には、ドイツ最大の温泉地「バーデン・バーデン」に並んで「草津町」の名前が!

自然をいかしたアクティビティにも力を取り入れているカルロヴィ・ヴァリは、山に抱かれた温泉街という点で草津と似ているかもしれません。

カルロヴィ・ヴァリへの行き方:高速バスが安くて快適!

あっという間にバスの時間が近づいてきたので、バスターミナルへ。

カルロヴィ・ヴァリと首都プラハの間を、鉄道と高速バスが結んでいます。僕のおすすめは「Regio Jet(レギオジェット)」という高速バス。安くて快適です。

黄色い車体がトレードマーク。

プラハからは約2時間。7ユーロ(≒850円)で、個人モニター電源・Wi-Fi完備のゆったりしたシートのバスに乗れます。ヘッドホンの貸出コーヒーのサービスまでついていて、さながら飛行機のよう。英語を話せるアテンダントさんが必ず乗務しているので安心です。

チェコ最大の温泉地!カルロヴィ・ヴァリを満喫しよう

半日ほどの滞在の間に、カルロヴィ・ヴァリの独自の温泉文化と素晴らしい街並みにすっかり魅了されました。

カルロヴィ・ヴァリは600年ほどの歴史があるヨーロッパ随一の名湯。古来から多くの人々が療養・保養に訪れてきたのも納得できる素晴らしい温泉地でした。

今度訪れるときはスパ付きのいいホテルに泊まって自然のアクティビティも体験して……と夢が膨らみます。

再訪を誓ったプラハ行きバスの車窓は、どこまでも畑と牧草地が広がっていました。

カルロヴィ・ヴァリの詳細情報まとめ

チェコ政府観光局の日本語ページに、カルロヴィ・ヴァリの概要がのっています。

また、カルロヴィ・ヴァリ市観光ページに英語で詳しい情報が出ています。

“Alžbětiny lázně(エリザベスのスパ)” の詳細情報

施設名 Alžbětiny lázně
住所 Smetanovy sady 1145/1 360 01 Karlovy Vary [地図]
営業時間 平日:8時00分~19時00分
土曜:9時~19時 日曜:10時~18時
定休日 なし
利用料金 入浴は398コルナ~(カード利用可)
URL https://www.karlovyvary.cz/en/elisabeth-spa-0 [英語]

名物の “Karlovarské oplatky” は、温泉街の中にいくつか店舗があります。カフェになっているお店と、持ち帰り専門のお店とがあるので、散策しながら好きな店舗に入ってみてください。店舗一覧は公式サイト [英語] からご覧ください。

カルロヴィ・ヴァリとプラハを結ぶ高速バス “Regio Jet” の公式サイトは英語でも見られます。欧米をカバーする交通予約サイトのOmioなら日本語で検索・予約できます。