温泉マニアだけでなく、外国人からも人気が高い東北の秘湯「乳頭温泉郷」。江戸時代の本陣が残る鶴の湯温泉や、和モダンで高級感あふれる妙の湯温泉など、7つの個性ある宿が点在しており、湯めぐりも楽しい温泉郷です。
今回僕が泊まったのは、茅葺きの建物が特徴の歴史を感じさせる宿「黒湯温泉」。大人っぽく落ち着いた焼き杉で壁が統一されていて、鮮やかな山々の緑との見事な調和に心奪われます。
建物もさることながら、やはり素晴らしいのは温泉。露天風呂で風を浴びながら濃厚な硫黄の濁り湯につかるのは至高のひとときです。
今回はそんな「黒湯温泉」でひと晩湯治をして過ごした様子をお伝えします。湯治は自炊しながら安く泊まれるので、温泉好きにおすすめです。
目次
思わずため息。茅葺きの宿でひと晩

駐車場から坂道を降りていって、パッと視界の開けたところに黒湯温泉があります。
まず目に入ってくるのがこの建物。受付と売店があり、ここでチェックインをします。優しそうなおじさんとおばさんがお出迎えしてくれました。

館内はこんな感じだそうです。手描きの地図にほっこりします。
おじさんについて砂利道を歩くと、僕たちが泊まる茅葺きの建物が見えてきました。

なんだろう、この「ぼくのなつやすみ」みたいな雰囲気。
晴れ渡る青空、鮮やかな木々の緑、茅葺きの宿。遠くでエゾハルゼミが鳴いてます。
僕はとんでもない世界に足を踏み込んでしまったようです。すっかりこの世界観に魅せられてしまいました。

建物はかなり本格的です。後で聞いたとろ、大正時代に建てられたものだそうです。
予約の電話で「普通の建物と茅葺きの建物、どちらになさいますか?」と聞かれたときに迷わず茅葺きを選んで大正解でした。

お部屋の中はこんな感じです。入り口側にはカーテンと網戸があり、虫さんの侵入やほかの宿泊客の目線は十分防げます。いろりもついていてかなり本格的です。
こう見えてWi-fiが飛んでいるのもうれしいところ。
畳に寝転がって携帯を開き湯めぐりの計画を立てるなんて、最高ですよね。
自分のペースで過ごせる!安くて快適な「湯治」を体験
湯治とは、温泉宿に素泊まりしながら自分のペースで過ごす伝統的な旅のスタイルです。
ふだんの温泉旅行に比べてリーズナブルな分、布団敷きはセルフで、アメニティも持ち込みで、食事も自炊で、となんでも自分でやることになります。
「晩ご飯を食べている間に布団敷きが入るから部屋を片付けなきゃ」とか、「もう少し寝ていたいけど朝ご飯に行かなきゃ」といった心配がなく、ふだんの温泉旅行とは一味違ったリフレッシュができるでしょう。
湯治とは?優れた効果・やり方・歴史・おすすめ期間など

これぞ秘湯!新鮮な濁り湯と絶景に大満足

こちらが「黒湯温泉」自慢の露天風呂……ではなく、これは源泉です。
100℃近くの煮えたぎるお湯がボコボコと湧き出しているので「絶対に入らないでください」とのこと。見るからに熱そうなので近づくことすらためらわれます。
秘湯情緒あふれる混浴露天風呂

お風呂は撮影禁止です。今回の撮影は特別な許可をいただいて行いました。
本物の露天風呂はこちら。自然の木をそのまま組み上げた湯小屋が美しいですね。山の景色も素晴らしく、向こうに温泉が湧きだしている様子が見えます。自然の恵みに感謝する気持ちが湧きあがります。
お湯は硫黄の濁り湯で、ほんのり酸っぱさと鉄っぽさとミネラル味があります*。肌がスベスベになる濃厚なお湯に感激です。

こちらは「上の湯」という混浴の温泉で、混浴の温泉で、内風呂と露天風呂と打たせ湯もあります。男女別のお風呂は別の建物にあります。
川を眺める男女別露天風呂も最高!

男女別のお風呂は「下の湯」という別の源泉が引かれていて、川に面して建てられています。上の湯に比べて、酸っぱさや鉄っぽさがやや薄いような気がしました*。

男湯の露天風呂はこんな感じで、川を一望できます。僕が訪れたときは砂防工事中で、厳しい自然環境に立ち向かう人間の営みを見ると身が引き締まる思いがしました。
黒湯温泉は山の中なので涼しく、夜になると肌寒いほど。肩まで浸かって身体がポカポカとしたら、半身浴モードに切り替えて風を浴びると、また温かいお風呂が恋しくなります。

内風呂もあるので、雨が降っているときも安心です。

お風呂の中に湧き水が引かれているので、水分補給もバッチリできます。冷えたお水が全身にしみわたりました。

身体を洗うスペースもあるのがうれしいところ。お湯に浸かっているだけでも十分身体の汚れが落ちるので、僕は頭だけ洗うことにしました。
*黒湯温泉の温泉水は飲用の許可がありません。飲泉なさらないよう、注意してください。
うたせ湯嫌いを克服する気持ちよさ!うたせ湯は湯加減絶妙

うたせ湯はこちらにもあります。貸切で利用するタイプで、「空いてます。どうぞ。」の札を裏返して入ります。

中はこんな感じで、仕切りなどは特になくザバザバと温泉の流れる滝が二つあるだけ。服を置ける台が手前にあるので、そこで服を脱いで使います。
勢いが強すぎる打たせ湯がニガテな僕がおそるおそる入ったところ、勢いがちょうどよくて驚くほど気持ちよかったです。打たせ湯嫌いを克服してしまいました。イスが低く勢いが少し強い奥の方でちょうどいいと思えるほどでした。
レッツ・クッキング!キンキンに冷えた湧き水が最高に美味い

ちょっと逆光していますが、左側の建物が自炊棟です。奥に見えるのが僕たちの泊まる茅葺きの建物。
予約するときに「茅葺きだと調理場までちょっと離れますよ」と言われたのですが、晴れていたので問題ナシでした。
調理器具と食器完備!広くて快適な調理場

調理場はこんな感じで、昔懐かしい雰囲気を残しながらも流しと火口がたくさんあってたいへん充実しています。

鍋釜や食器類、包丁まな板などはすべて自由に使えるので、自炊初心者の方でも安心です。食材と調味料だけ持ち込めば料理ができますね。

蛇口からは常にキンキンに冷えた湧き水が流れていて、こんな感じで飲み物や食べ物を冷やしておけます。
スッキリした飲み口のたいへん美味しいお水で、風呂上がりの水分補給にも最適でした。
これでご飯を炊いたら美味しいこと間違いなしです。炊飯器も自由に使えるので、美味しいご飯が手軽に炊けますね。
地元食材で作る料理も旅の楽しみ

晩ご飯はこんな感じで作りました。回鍋肉とトマト卵炒めです。炊飯器のスイッチを押し忘れていたので、ビールを飲み終わったころにご飯が炊けました……
直売所や地元のスーパーで買った新鮮な野菜を使って作った料理は、ヘルシーで美味しかったです。

朝ご飯はこんな感じで作りました。キャベツのスープとチーズオムレツにトーストを合わせました。トースターもあるのでパンも美味しく焼けます。
湧き水で冷やしたサクランボも最高でした。

ちなみに夜の茅葺きの建物はこんな感じです。なんとも風情があって、日ごろのあわただしい生活をすっかり忘れてしまいそうになります。これぞ湯治の醍醐味です。
「ぼくなつ」的世界観!黒湯温泉に泊まってみよう

受付の前にはラムネが冷やしてあります。”夏” を感じる心にくいおもてなしで、日帰り温泉に訪れた人たちが次々と買っていきました。

受付から駐車場に続く坂を登りはじめてすぐのところで湧き水が飲めます。
夏でもキンキンに冷たい水が湧き出しているのに感激して、通るたびにグビグビと飲んでしまいました。

山の中の温泉宿にふさわしい、情緒あふれる黒湯温泉。
とりわけ趣深い茅葺きの湯治棟に泊まれば、ゆっくりとした時の流れの中で日常生活と離れて自分らしく過ごせます。山の中なので涼しく、空気もおいしいです。
「ぼくのなつやすみ」みたいだ! と感激していましたが、秋は山が一面に紅葉してまた絶景なのだそうです。雪の時期は休業してしまうため、春から秋の間しか泊まれないのでご注意を。
何度でも訪れたくなる乳頭温泉郷の最奥の宿、黒湯温泉にぜひ泊まってみてください。
「乳頭温泉郷 黒湯温泉」の詳細情報
施設名 | 「乳頭温泉郷 黒湯温泉」 |
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住所 | 秋田県仙北市田沢湖生保内2-1 |
電話番号 | 0187-46-2214 |
営業時間 | 9時00分〜16時00分(日帰り) |
休業期間 | 11月下旬~4月上旬 |
利用料金 | 日帰り入浴:大人600円・小人300円 宿泊:湯治部3,500円~・旅館部11,500円~ |
駐車場 | 無料 |
URL | www.kuroyu.com/ |
★乳頭温泉郷の宿泊者限定で、1,800円で7つの温泉に入れる「湯めぐり帖」が販売されています。1年間有効でたいへんお得なので、お泊りの際はぜひご利用ください。
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